第3話 ファーストコンタクトだった

 これが僕と美少女 亜蘭アランとのファーストコンタクトだった。


 柔らかな胸の膨らみが僕の胸に押しつけられる。



「あ、あのね……。ちょっと」

 初めての体験に僕はドキドキして身体が震えてしまった。



「ねえェ、見てくれる?」

 美少女は大きな瞳で僕を見つめた。



「み、見てッて、なにを……🙄💦」

 まさか、初対面で見せるつもりなのか。


 恥ずかしくなって、つい視線を逸らせてしまった。

 胸が高鳴り、頬が熱く火照ってくる感じだ。



「フフ……、エロいモノじゃないわよ。

 これ、これ!!」

 抱きついたまま美少女はスケッチブックを僕に手渡そうとした。



「あァ……、絵か。わ、わかったよ。

 見るから……、ちょっと離れて下さい」

 こんな女子と抱き合った状態ではスケッチブックを見れない。



「うン……」

 素直に亜蘭は頷き少しだけ身体を離した。



「ふゥ〜……」僕は大きく息をつくと、少しだけ落ち着いてきた。


 改めて、スケッチブックを開いて見た。

 かすかに興奮で手が震えているようだ。


 それほど期待したワケではないがスケッチブックをめくった瞬間、僕はあ然とした。


「えェ……?」なんだ。

 まさか、これは!! マジか。


 圧倒的なデッサン力だ。


「うゥ……」僕は小さく呻いた。

 十年以上、アニメに関わっている僕よりも遥かに上手い。



「どう? やっぱダメ」

 美少女は心配そうに訊いた。


「いやいや、ダメッて言うか。

 スゴいデッサン力だけど……。

 これ、マジでキミが。

 そのォ……、亜蘭ちゃんが描いたの?」

 苦笑いを浮かべた。


「フフ……、笑っちゃうくらい下手?」

 おどけたように肩を竦めた。


「いや、そんな……、スゴく上手いよ。

 ア、亜蘭ちゃん」

 いったいこの子は何者なんだろう。


「フフ……、亜蘭ッて呼び捨てで良いよ」


「亜蘭か。あの……、キミ、いくつなの?

 制服だから、まだ学生さんだよねェ……。

 ッて言うか。キミィ……、もしかして」

 童顔で可愛らしい顔をしている。

 もしかしたらJTかもしれない。



 だが僕の質問はスルーし彼女の方から逆に訊かれた。

「ねえェ……、名前なんて言うの?」


「え、僕の名前……」

「うン……」


「僕は高原 アユムだけど……」

「ふゥン……、アユムか。

 じゃ、ポーね」


「ポー……」小学校の時のあだ名だ。



「ねえェ……、ポーん、ここから近いの」

 勝手に亜蘭アランは僕の自転車の前方フロントバスケットにスクールバッグを詰め込んだ。

「あァ……、ま、すぐ近くだけど」


「フフゥン……」

 まるで自分のチャリのように、ちゃっかり僕の自転車に乗ろうとした。



「おいおい、何してんだよ」



「私、ほらァ、もう終電行っちゃたから帰れないじゃン」

 勝手にペダルをこいで自転車を走らせた。


「え、そんなこと……」

 知らないよと、つい口に出して言いそうになった。



「だから、悪いけど今夜、ポーんに泊めてェ……✨🤗✨✨」

 スイスイと自転車をこいでいく。


「な、なにィ……、そんなの無理だよ」

 懸命に、僕は彼女を走って追いかけるカッコウだ。


「ええェ、なんでェ……」

「なんでッてェ……、男子なら別に構わないけど……。

 見ず知らずの女の子を泊められないだろう」


「あ、大丈夫。遠慮しないで」


「いやいや、遠慮ッて、僕の方が使う言葉じゃん。

 マジで家は両親ともいないから、今、僕ひとりなんだ……。

 なにか、あると……、ほら、ヤバいだろう」

 アラサー独身男性の部屋に学生の美少女を泊められるワケがない。



「別に、ちょうど良いわ。大丈夫よ。

 ポー!! 心配しなくても、夜這いなんかしないから。フッフフ……✨🤭✨✨」

 美少女は意味深に含み笑いをした。



「いやいや、夜這いッてェ……」

 何を言っているんだ。この子は。



 逆だッてェ……。こんなキュートな女子が独身男性の部屋へ泊まったら男性の方が夜這いしてしまう。





 この時は、まだ亜蘭アランが中学を卒業したばかりだとは思わなかった。







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