第5話 初登校

 翌朝、目覚ましで目が覚めスマホを見ると一件のメッセージが届いていた。

新着メッセージと書かれた通知を押すとラインのトーク画面へと切り替わった。

名前を見てみると"海音"と書かれてあった。

気になるメッセージはというと……

『おやすみ』の一言とともにグッドマークを指で作ったパンダのスタンプが送られてきていた

 送信時間を見てみると23時を回ったくらいだった。

その時間は俺が寝て30分後くらいだった。

昨日は意外と早く眠気がきてメッセージが送られていた頃にはもう寝ていたのだ。


このまま既読無視するのも良くないしな……

『おはよう』

と一言送っておいた。

すると、一瞬で『おはよっ!』とメッセージが返ってきた。めちゃ早い。


 おそらく柏木さんは長い病院生活の末、学校、クラス、友達、と言うものをよくわかっていないのだろう。

でなければ昨日のように付き合ってもない異性が友達というカテゴリーで手を繋ぐということにはならないだろう。

 あと、今みたいなおやすみライン?みたいなのも恋人でなければしないと思う。(多分)

まあ俺も実際嬉しいからいいんだけど。

でも、今日から本格的に学校に行くうちに友達と恋人の違いに気づいてくるんだろうな。 そんなことを思いなが姉ちゃんの作ってくれたトーストを食べ家を出た。


 藤沢駅につき江ノ電鎌倉行きの電車へと乗る。降りるのは学校の最寄り駅の七里ヶ浜駅。

入学したてこそ、この江ノ電から見える海を眺めながら登校してたが、今はスマホゲームに目がいき、気づくと駅についてるという感じだ。

 今日も電車に乗るなり椅子に座りスマホへと目を落とす。

すると、俺の通う高校の制服をきた女子が両手をつり革にかけながら話しかけてきた。

「奏太っ、おはよ!」

ん?誰だ?と思い、顔を見てみると

昨日砂浜で出会い、一緒に江ノ島に行き、ラインを交換して、今朝もメッセージを送った人。そう柏木海音だった。

「おはよう」

柏木さんということに気づき少し遅れて返事を返した。


そして、俺の隣へと座ろうとした。

柏木さんが座ると同時に柏木さんの長い髪の毛がブワッと俺の顔面へと覆い被さる。

くせっ毛一つない綺麗な髪はとてもサラサラしていてとても感触がいい。

「あっ、ごめんっ」

「いい匂い」

そう柏木さんは謝ったが俺は反射的に感想を口に出してしまった。

「ほんと!ありがとうっ」

きもがられるかと思ったが、なんか嬉しがってくれてるのでほっとした。 


 電車が発車し線路の上をガタンゴトンと走っていく。

走行中、柏木さんは走る電車の外をずっと眺めていた。


 数分がたち、昨日聞き忘れてたことを聞いてみることにした。

「そういや、柏木さんって何組なの?」

そう聞いたが、返事が返ってこない。

無視された………と思い隣に座る柏木さんを見てみると、彼女はスゥースゥーと小さな息を吐きながら寝ていた。

寝顔は、と。そう思い柏木さんの顔を下から覗くように見てみた。

うん、やっぱりS級美少女なんだよなあ。

鼻が高く整った顔にまぶたを閉じたときによく見える艶らかなまつげどれをとっても非の打ち所がないような美少女。

こんな子と俺は数年前に出会っていたのかと思うと謎の優越感がなきにしもあらず。


(久々に行く学校が楽しみすぎて昨日は寝れなかったんだろうな)

そう思い、海の見えるところを差し掛かっても起こさないでおいた。

まあ、これから毎日見るだろうし。


 学校の最寄り駅の七里ヶ浜駅につこうとしていたが柏木木さんは目を瞑ったまま起きる気配はなかった。


「柏木さん、駅つくよ」

「うぅ〜ん」

起きる気ないな。

次は肩をゆすり、声をかける。

「ほら起きないと乗り過ごしてしまうから」

するとようやく目を開けた。

「やばいっ、学校遅刻する!」

と、中々の声量とともに柏木さんは立ち上がった。

当然周りの視線はこちらへ釘付け。

笑う人もいれば柏木さんの美貌に釘付けの人もいる。

なんか、俺まで恥ずかしい……。

「遅刻はしないと思うよ、なぜならもうここは家じゃなくてもう学校前の電車の中だからね」

悪戯心の湧いた俺はからかうようにそう言ってみせた。

すると顔を赤くし睨みつけるような眼差しを向けてきた。

こ、こわい……。

「わかってるよ、間違えただけだし」

その間違いが致命的なんだけどなあ。

「でも、ありがとう。起こしてくれて」

「まあ、な初登校日遅刻するわけにもいかないしな」

そう言う俺は入学式に腹痛で大遅刻したんだけどな。


 七里ヶ浜駅へつくと、徒歩1分もしないうちに俺と柏木さんの通う高校の校門へとたどり着く。


 柏木さんは校門前に立つと、スゥーッと息を吸って吐いた。

「今日からわたしの学校生活がはじまるんだ」

そう一言いい学校へと入っていった。



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