第7話

ツカサが座っていた椅子の周りが通り道を残した読み終わった本の壁が出来上がった頃、Dr.ワクテが以前よりやつれた様子で部屋の扉を開け、ズカズカと入って来た。


ツカサは本に夢中であることと陽の光が全く入ってこないことから気づかなかったが、既に15日経過していた。


「仕組みは理解したか?早速実践練習をしてもらうぞ」

Dr.ワクテはやや早口になりながら、ツカサを連れて通路を進んでいく。


ツカサは振り返って名残惜しそうにさっきまでいた椅子を見たが、立ち止まるわけにもいかないので、おとなしくついて行く。


「くそ、時間が無い…。なんであんな強力な個体が出てくるんだ?まさかあいつが死んだのか…?いやそんなはずはない…」

Dr.ワクテがブツブツと呟いていた独り言は、後ろに歩いていたツカサに聞こえることはなかった。





数分ほど歩いたところにあったのは、だいぶ大きめの部屋で感覚としては体育館のような感じで、何人もの人が魔法らしきものを一生懸命放っている。


奥には焦げたり欠けたりした的のようなものが、ずらりと横に並んでいた。


ツカサはキョロキョロと周りを見ていると、懐かしい顔を見つけた。


久しぶり、とツカサは久々に見た、クラスメイト3人遭難組に声をかけようとした。


ちなみに今のツカサは最近の生活のこともあって上機嫌である。しかし顔にその情報は全く出ていない。


そんな上機嫌なツカサの第一声目を聞いた瞬間、遭難組は睨むような目でツカサの方を振り向いた。

遭難組は一瞬何か言いたげな顔をするが、ツカサの後ろに立っているDr.ワクテを見るとすぐに再び的と向かい合った。


ツカサは思わず後ろを振り返ると、ウンウンと頷いて満足げな顔をしたDr.ワクテがいた。


ツカサは遭難組の3人に何が行われ、従順になったのか考えないことにした。


その後ツカサも他の人たちと混ざって練習をしたが、ほとんど成果はなかった。

遭難組は的まで届くことはないもののちゃんと火やら風やらを出していたので、小説のように集中すればできるものだと思っていたツカサは、異世界なのに現実を思い知らされることとなる。



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