第73話

 The end of the world 5


モートは溢れかえる周囲の火だるまの人間の首と共にケルベロスの首を狩っていた。


 やっと、ケルベロスの首の数が減った。


 モートは真っ赤な太陽の下で、ここからヒルズタウンの方を向いて首を傾げる。オーゼムと同じく。何ものにも見えない魂の群れがかなりの速さで迫って来るのを感じたからだ。モートは警戒して銀の大鎌を持ち直すと自分。いや、倒れたケルベロスの元へとその軍勢が現れた。


 闇の軍勢。モートにはそう見えた。

 骨格だけでできた馬に乗った漆黒の鎧を着た黒い霧を纏った骨の軍勢だった。


 モートはその中で、一際大きな骨だけの馬に乗る巨大な漆黒の霧に包まれたむくろが、この軍勢のリーダーのように思えた。これが最後の戦いだと自分に言い聞かせて。モートは銀の大鎌で数千を超える骸骨を狩っていくことにした。銀の大鎌を持ち直し闇の軍勢のど真ん中に飛び込んだ。


 一体のあばら骨に狩り込むと、乾いた音と共にバラバラに地へと骨がぶちまかれた。脆いのだ。モートはこの勢いで狩り始めた。ボロボロになった剣や盾を持つ骸骨からは強さはまったく感じられない。辺りは骨の割れる音と、折れる音、金属の音が響き渡るが、おおよそ数十分で、闇の軍勢は跡形もなく消滅していた。


 けれども、リーダーは幾ばくか違った。

 大剣と銀の大鎌がぶつかり合い。激しい火花が飛び散る。モートはこの骸は強いと知った。


「君は? 私と同じく罪人だね? そんなところで何をしているのだ?」

「……終わりだ」


 すぐさまモートは骸の首に狩り込む。

 そして、銀の大鎌に力を入れ首を吹っ飛ばした。


 額に浮き出た汗を拭うと、ウエストタウンの地獄の門を閉じた。


「次は、シルバー・ハイネスト・ポールで最後だね」


 モートはこの街の中央へと走った。


 

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