第40話

Envy 7


 モートはジョンの屋敷の外観を眺めていた。

 白い月の明かりによって僅かに照らされる。薄暗い針葉樹の間に挟まる青煉瓦の屋敷は、部屋の数こそ多いが、全体的にこじんまりとした印象の屋敷だった。

 

Envy 8

 

「さあ、来ましたね」


 ジョンが急に緊迫した表情を浮かべ。一人の女中から渡された一冊のグリモワールを持ち出した。青い炎の暖炉に手を差し伸べると。すると、暖炉の炎から巨大な五匹の蛇がズルズルと這い出て来た。その一匹の鎌首をジョンは撫でると、すぐさま全ての蛇を、この部屋のあらゆる出入り口に向かわせる。


「ジョンさん? 何を?! 何が起きているんです?!」


 ヘレンは這い出てきた大きな扉よりも巨大な五匹の蛇に震えながら考えた。彼がここまで警戒する人物は、ここホワイト・シティでは一人しかいないと……。

「私はね。今までずっと……考えていたんですよ。自分は生か死のどちらに強い魅力を常に感じるかと。その答えは? そう、私はとても大切な人が亡くなった日に、その答えを知ったのです」

 ヘレンはジョンの顔の血色がみるみるうちに良くなっているのに気が付いた。

「私はね。モート君が凄く羨ましいんだ!!」

 突然、巨大な蛇が壁にめり込み何かに噛みついた。


「グッ……!」

 

 くぐもった声が壁から部屋へと木霊した。



 

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