第39話
真夜中に死が舞い落ちる。
やっと猿の軍勢が全滅すると、モートはヒルズタウンへと急いだ。
モートがヒルズタウンにたどり着くまでには、猿の軍勢はもはやヒルズタウン全体を襲うかのような勢いになっていた。
すでに街の人々は次々と斬り殺されていた。建物が蹂躙され、逃げ惑う人々の悲鳴や怒号が聞こえる只中。ヒルズタウンの一角にある猿の大軍の総司令部のような位置にモートは走った。逃げ惑う人々や建物を通り過ぎ。そのど真ん中に飛び込んだ。
すぐさま大勢の猿の剣戟がモートを襲う。幾重もの剣を寸でで躱しながら、モートは猿の首を狩り続けた。
盾や剣。そして銀の大鎌からの火花が飛び交う。
だが、モートの真の狙いは猿の胸部。
心臓だった。
猿の首を刈り取ると次は胸を狙い銀の大鎌で、胸部にでかい穴を空けた。猿の軍勢は激しく吐血し、倒れだす。しばらくして、モートが狩り続けていると猿の大軍が劣勢となりだした。
おびただしい鮮血と濁った血、贓物、腕や足が真っ白な地面に飛び散る。
どれだけ時が経ったのか、モート自身は気に留めなかった。
猿の軍勢が全滅すると、モートは次に隣のジョン・ムーアの屋敷へ向かった。
Envy 6
「あ、私はここで。出会うわけにはいきませんので……」
オーゼムはそう言うと、奥の部屋へと身を隠した。
「ちょっと……。オーゼムさん?」
ヘレンはロウソクの明かりで、姿が奥の部屋へと瞬時に消えたオーゼムの方を照らした。仄かな明かりで見える奥の部屋の壁には、やはり絶滅種の剥製がズラリと並んであった。
なんだか不気味に思えてまたヘレンは心細くなって、オーゼムの名をまた呼んだ。
シンと静まり返った部屋からオーゼムの感激の声が上がった。
「おお! これは高そうですね! 一体いくらになるのでしょう?」
ヘレンはオーゼムのことを諦めてその場に残した。
ヘレンは数十分前に勇気を出して、再度ジョンとの面会を女中頭に告げたのだった。ヘレンのための野菜や肉の盛られた食器を持った女中頭はまったく能面のように無表情だったが、あっさりと頷いてくれた。だが、ヘレンが元気を取り戻していることに何も反応をしなかった。
今は何時だろうか?
ヘレンは考えた。
ここへ来てからは、時間を知らなかった。
腕時計は持っていない。
腕時計を持つこと自体。のんびりとしたヒルズタウンでは珍しいのだ。
部屋の中央からの呼び声に応え、ヘレンは大部屋に足を踏み入れた。
数人の女中に連れられ再び現れたジョンの顔には、憂いが感じ取られたが……。
何かがズレている。
ジョンは薄ら笑いを浮かべていたのだ。
ヘレンはそのジョンの不気味な笑みに戦慄を覚えた。
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