第38話

「すまない。待たせたねアリス」

「一体? なんだったのです?」


 しばらくすると、いつの間にかモートが真正面に立っていた。

 モートは席に着いて、何事もなかったかのように食事を楽しんだ。


「料理も収穫も今日は本格的だった……」

 モートと食事を再開したアリスの耳には、モートの独り言がいつまでも恐怖と共に鳴り響いていた。


 Envy 5


 モートはあの首を狩っても生きている猿の頭の人間を疑問に思っていた。他は黒い魂の人間だった。最初は猿はグリモワールからの召喚だと思った。けれども、近くにはグリモワールの本がない。本を使う者もいない。そして、確実に自分だけを狙っていた。


 猿は殺傷力の強い剣と、銀の大鎌でも壊せないほどの優れた盾。そして頑丈なフルプレートメイルにそれぞれ身を包んでいた。

 黒い魂の人間は全て銃を所持していた。

 それに、猿は首を狩ることが困難だった。ほとんど中世の戦士級の強さだなのだ。

 

 残りのグリモワールは、後は怠惰、憤怒、傲慢、嫉妬の四つだが、何者かが、あの猿の召喚に、やはりその中のどれかを使ったのだとモートは考えることにした。


 この自分を狙う猿の大軍の動機は? 

 何故か相手が切羽詰っている感じだった。

 襲ってくる黒い魂の人間の誰か一人に聞いてみないといけないのだろうか? 

 オーゼムはジョンの屋敷だ。


 モートはアリスと一旦別れることにした。

 真っ白な雪が敷き詰められた道路を真っ赤な絨毯に変えるほどの大量の狩りの時間が迫っていた。

  レストラン「ビルド」からアイスバーンの大通りへとモートは向かった。アリスは裏口から「グレード・キャリオン」に向かっているはずだった。ここホワイト・シティでも珍しい心底寒い日だった。

  

 …………


 今は午後の20時頃。

 モートは身体中血に染まりながら大通りからヒルズタウンまで猿の軍勢の狩りをし続けていた。


あれから4時間が経過していた。

黒い魂の人間は全て狩り終えた。

 

 ホワイト・シティの道路が鮮血で染まる頃には、天空の白き月の仄暗い空に、漆黒の髑髏が浮かび上がった。それは空中を漂い。まるで、モートの狩りを空の上から満足気に眺めているかのようだった。

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