【Gコラボ 人狼説明会②】

「みなさん、ある村を想像してください。ある日の朝、村長である私が、身体をズタズタに引き裂かれた無惨な死体で発見されます。それがゲーム開始の合図です。……この村には、朝は村人の姿をしながらも、夜には狼に変身して人を殺す、人狼が紛れ込んでいたのです。村には人狼は2人。その他は村人です。人狼はお互いのことが人狼であることを認識しています。夜パートになると、村人を1人、人狼だけで3分ほど話し合ってもらって選び、殺害します。夜が明けた時点で、犠牲者は発表されます。殺害された者はゲームから除外されてしまいます。朝のパートでは、村人は全員で5分間ほど話し合って、人狼であると思われる人物を一人、口頭での投票で選択します。選ばれた者は村から追放されてしまいます。追放された方も、ゲームから除外されますが、なにか遺言を残していただいても構いません。狼の人数が村人と同数になった時点で人狼側の勝利となります。逆に人狼2人を村から追放した時点で、村人側の勝利となります」


「このゲームの肝である話し合いが、どちらかの勝利になるまで繰り返されていくってことですね?」


 『虎鉄』が自分の頭を整理するかのように言葉を挟んだ。全員が天井を眺めたり、机に置いてあるメモ帳とペンでゲームを理解しようと努めている。


「そうです。では、特殊役職……」


「すみません。朝の投票で、追放者が同数だった場合はどうするんですか?」


 『ムンクさん』が生真面目に挙手してから発言する。『灰色狼』がすこし驚いたような表情をしてから、


「おお、素晴らしい。良い質問です。……その場合は本来ならば再度、決選投票を行います。しかし今回は人数も少ないですし、投票を無効にして追放者なしとします」


 と答えた。


「人狼有利ですね。了解です。ゲーム中にも、メモを取ってもいいですか?」


 『灰色狼』は微笑んで、ゆっくりと深く頷いた。

 なんで有利?という顔をしている実況者が何人か。


「『ムンクさん』は初心者ではなさそうですね。メモも認めましょう。……では、村人の特殊役職の説明に戻ります。村人の中には、特殊な能力を持っている者がいます。様々な役職が本来はあるのですが、今回は占い師と狩人と狂人のそれぞれ1名です。狩人は夜になる直前に、プレイヤー1人を選んで護衛することができます。護衛された者は、夜に人狼からターゲットにされても狩人に守られるため死ぬことはありません。護衛成功の場合、朝になった時に私から、村人は狩人に守られ夜の犠牲者がなかったことがアナウンスされます。注意してほしいのは、狩人は自分自身を守ることはできないことです。狼から犠牲者に選ばれれば殺されてしまいます。……次に占い師です。占い師には朝になる前に、プレイヤーを一人選んでいただきます。占い師は、選んだプレイヤーが村人か人狼かをGMから知ることができます。今回は村長が殺害された直後に、占い師に選ばれた人の占いからゲームをスタートさせる設定にしますので、占い師の方はご注意ください」


「はーっ!頭がパンク寸前だっての!」


 ガシガシと茶髪に染めた髪をかく『アス』。ぴょん、と立ったアホ毛に彼女は気付いて、慌てて両手で髪を撫でた。


「文句を大きな声で言うなって、『アス』……。つまり、ゲーム自体は占い師の占いと、狼二人の共有からスタートして、朝になって議論して投票して追放して、狩人が守る人を決めて、夜になって人狼が殺して、占いして朝になって犠牲者が発表されて、の繰り返しってことですね?」


 『kunちゃん』は『アス』をたしなめつつも、自分もルール理解の限界を迎えそうなことを認識していた。『灰色狼』が「そうです」と答えると、どこかほっとした表情を浮かべる。


「あれ?キョージンの説明は?」


「いまからすんだべや。『A』は黙って聞いてろ」


「はーい……」


 『Aちゃん』の少し高い声の質問を、『マサ』が厳しく制止した。『アス』がそれを睨んで、『kunちゃん』が「まあまあ」と場を静めようと手を振る。

 いつもは動画の声だけでしか分からない仕草まで見えることが、他の実況者たちにはとても新鮮だった。

 自分自身、実況者で。向こうはどう思っているか分からないが、こちらからすればライバルで。でも同時に彼らのファンでもあること。その複雑な関係性と感情を再確認する。


「狂人は、村人でありながら人狼側に属する役職となります。占い師に占われても、村人であるとアナウンスされます。もちろん人狼側からは、狂人は村人に見えており、人狼は狂人が誰なのかを認識することはできません。ルールによっては違うんですけどね。……そんな中で狂人には、人狼に有利に働くよう立ち回ってもらいます。人狼側の勝利が、狂人の勝利条件となります」


「人狼2人たす狂人1人ぶいえす、村人4人ってことか。了解でーす」


 企画を考えた『近藤』が、総括するようにそう言った。言いながら手際よく、アイマスクと無線ヘッドホンを全員の目の前に置いていく。背後にあるラジカセのスイッチを「ぐりーんでー流しまーす」と言いながら押した。


「まあ、みなさんゲーマーですし、ゲームが往々にしてそうであるように、何回かやってると慣れてきますから。とりあえずやってみましょう!アイマスクとヘッドホンをしてる時に、私に肩を叩かれたら外してくださいね」

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