第6話後編-2-

「キョドりすぎって」


素で大ウケしてるエリカさん

大きなベッドの上でバタバタしながら大笑いしている



いや、そうでしょうに


人生で1度もこんな場所入ったことないし、前フリもなく唐突に大人のホテル、、

そんなとこに足を踏み入れるって酔ったテンションでもパニックのベクトルの極みであった


え、普通だよね?


夕間、どうしようホテルにいる


笑ってるエリカさんに見られないように、なぜか隠れて送るかのように夕間へラインを送った


頑張れよー


おやすみ


テキーラで限界


三通ぽんぽんと来て


何を送っても未読になった



え、驚きもなにもないの?


いや、驚かないにしても僕が驚く事とか汲み取ってくれよ!



落ち着け落ち着け此太


なにもやましいことはない


雨降ってるし、とりあえず室内


室内だってことなんだ


カラオケでも良かったんじゃ


ネカフェも個室あるとこなら別に話したりしてて周り気にすることもないし、、


いや、とりあえず分かんないけど


雨を凌いでくつろぐ為にここに居る


それだけの事、慌てることも焦ることもなにもない


よし、落ち着け僕よ!



無理やり自分を落ち着かせてソファに腰を下ろし隣の小さな冷蔵庫を空ける


入っていたビールに手が伸びた


全然落ち着いてなかった


〆のラーメンを食べた筈なのに


僕は苦味が広がるビールを少しばかり口にして煙草に火をつけた


「まだ飲むの?元気だねー」


いつの間にか笑い終えてたエリカさんが隣に腰を下ろして煙草に火をつける


無言で僕のビールを手に取りあおるように飲む


ごくっという音と煙草を吐く吐息の音


エアコンの僅かな音


落ち着かなくてバクバクいってる自分の心臓の音がエリカさんにも聞こえてるんじゃないかってくらい静かだった


表情は努めて冷静さを保った


なんで?


エリカさんはニヤニヤと悪戯っぽさが溢れた顔で僕を見ていた


気のせいなのか


さっき迄と、何処か、何故か、別人に見えるような、感じるような雰囲気


単にまたビールを口にして酔いが回った?


下手に笑いから沈黙に変わって


うって変わった状況から、何を話せばいいんだろう


急に気まずくなった


「花音ちゃんは、此太君がこんなとこ来てるって知ったらどんな反応するかな?」



え?



いきなり、何を



悪戯な表情は変わらない


変わらないけれど、トーンは真剣味を帯びていた


僕の頭はフリーズした


何でいきなりそんなことを?


「意地が悪い事言わないで下さいよ」


「え、そんなことないよ?純粋に疑問に思っただけだよ?」


意図が読めない


なんで、エリカさんが花音の事を急に話題に今更するのか


折角この何時間かで、楽になったのに


冷蔵庫からもう2本ビールとミネラルウォーターを出すと、1本を空けて差し出してきた


苦い


口の中だけじゃなくて


色々と


何も答えれず少し俯いてビールを、啜るように飲んでると


肩にエリカさんがもたれかかって来た


驚きのあまりビールを落としそうになった



「寝て起きて、お酒が抜けて、綺麗さっぱりお酒と一緒に花音ちゃんの事も此太君から消えてなくなるかなー?」


試すような、そんな口ぶりだった


いや、分かりきって敢えて言っている感じにも思えた



そうだ、根本的には何も解決してない


でも、今現実逃避出来てるのになんで急に突き刺す様なことを



分からない



僕の様子を観察するようにもたれ掛かる至近距離のエリカさんは少しとろんとした瞳で僕を見ていた







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る