第37話

 瞬間、宮本博士と研究員たちの頭上を幾つもの雷が通過していく。

 魚人たちは灰燼と化すが……。

 寒い夏の夜である。涼しいとまではいえないが肌寒い風が吹いている海に、水に囲まれた学園内は今までにない危機の真っ只中であった。

 このままでは……。

 致し方ないので、私は外で渦潮の数を数えた。

「ひー、ふー、みー……」

 百まで数えると、私は自衛隊たちの寝床の教室から。ありったけの手投げ弾を持ちだした。

 それらを同時に数十の渦潮に降らせた。

 爆裂と熱風が海上に吹き荒れるが。

 しかし、幾つも幾つもと渦潮が新たに発生しだした。

 どうやら北龍はここまで読んでいたのだろう。

 口惜しいが、こうなっては私にはどうしようもない。


 その時、学園の二階の窓ガラスが割れる音と、麻生の悲鳴が私の耳をつんざいた。私はすぐさま戻ると、ベランダに続く窓ガラスが割れた2年D組には、外から数多の魚人たちが溢れだすかのように教室内へと侵入してきていた。

 教室内の設備なども破壊していく魚人たちの数と勢いに。

 もはやこれまで……と、思った矢先。

 皆騒然とした。

 地姫と麻生が魚人たちによる危機的状況の中。なんと今までじっとしていた卓登が戦いだしたのだ。

 はて、そういえば卓登は武と互角の合気道の達人であったような。

 卓登はその呼吸力で、魚人たちのモリを返していく。元々、合気道は対多人数用の武術のようである。

 麻生に向けられた数人のモリを転換をし、体制を整えようとした地姫に向かったモリを入り身で対処した。

 踏み込みの音は教室内に鳴り響くかのようだ。魚人が幾人も打ち倒されていく。

 これには、魚人も唖然とした。当然、北龍も後で大きな誤算に頭を抱えるであろう。

 地姫が体制を整えた。

 瞬時に幾つもの落雷がベランダの空から斜めに降り注いだ。

 傷を負い。灰となったものが。多く現れた数多の魚人たちも、その勢いが劣勢になってきていた。


 私は鳳翼学園の外に行くと、遠い空から自衛隊の無数のヘリコプターが応援に駆け付けていた。

 応援の自衛隊たちが来るのも時間の問題であろう。

 麻生の友は皆、強き良き友ばかりだった。

 もう鳳翼学園は無事であろう。



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