第14話
「学生たちは、目下全力で捜索中です。龍がいるので、この近辺しか行けませんが。五機の小型潜水艦と三機のヘリで捜索をしています。本部に応援も要請していますし。宮本博士……あの龍はいったい何なんでしょうね?」
「龍か……この学園へと幾度も来ているのは……何故だろう……か? ともかく念の為にこれからも学生たちを探してくれたまえ。不思議なことが起きているから、それを信じると、恐らく手遅れにはならないはずだが……」
薄暗い廊下である。
田嶋の顔は、時折岩のような固く険しい顔になる。
何故だろう? もうすでに、学園の人々は助からないとでもいうのだろうか?
「あの龍には弾丸が鱗に当たって貫通しません。ですが、宮本博士の言う通り。そこは催涙弾が有効でした」
「……ああ、やはり生物なのでな」
「正直、それでもいつまで持つか……わからないのが現状です。残念です」
なるほど、龍の脅威が迫っているのか。
私にはどうしようもない。
宮本博士は麻生の方を見ていた。
田嶋はきっと現状を嘆いているような顔だろうが、私は麻生と宮本博士の方を見る。
宮本博士は、さっきから麻生を気にかけていたのだろう。
「あの嬢ちゃんの身内……酷い怪我だってね。何か明るいニュースでもあればな……」
「命には別状はないですが。……明るいニュースですか? ないので正直歯がゆいです……」
「龍の脅威さえなければ、雨の原因を解析できるはずだ……なんとかなるだろうか……?」
「宮本博士はこの半年間もの雨の原因を調べているのですか?」
「ああ……」
宮本博士はあらぬ方を向いた。
ここは学園の二階である。
すでに、一階までは浸水しはじめ人々の住めるところはなかった。三階は粉砕された屋上の瓦礫の山々で危険だった。
「もって、後一週間くらいか……」
宮本博士は他の研究員たちに、早めに雨の原因の解明ができるようにしろと指示をだし、麻生の元へと歩いて行った。
ぽたぽたと降る雨は、未だ振り続けているのだ。
このままでは……。
「お嬢さん。さっきの会話はどうか内密に……」
「はい……」
麻生はそう言うと、自分の教室へと戻って行った。
心なしかその後ろ姿は、何かを決心したかのようだった。
麻生は自分の今の寝床の2年B組の教室へと戻ると、大人たちや先生を置いて、蹲るクラスメイトたちから卓登を廊下へ連れ出した。
「卓登。武たちを待つと同時に……龍をなんとかしましょ。私と一緒に」
「あの龍を? どうやって?」
卓登はこめかみを突いて頭を振ったようである。恐らくは考える時の癖だろう。
「多分、学園にいる人々が関係しているはずよ……」
「って……二人だけで?」
ここには、みんなの分の寝袋とインスタント食品や缶詰が至るところに散見してあり、机や椅子は全て別の場所へと取り除かれていた。薄暗く鬱屈している人々の気分は、雨の降る外を眺める人や、本を読む人たちの表情などでわかる。
麻生は何を考えたのだろうか?
確かに龍が襲うのは学園内の人々が関係しているが……。
私の知っていることにも限界がある。一体何を考えたのだろう?
そうか……龍のアギトだ。
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