第2話

 何かを愛することは、きっと他の誰かの犠牲を厭わないことであろう。

 我が身を犠牲にしてもその人の為に尽くしたい、もしくは我が身を省みずその人を救いたい、という思いを愛とするのならば、それは自分よりその人を優先していることに他ならない。

 言ってみれば、当たり前の話だ。自分を振り返れば、愛していると何度か口に出してはみたものの、本当に愛していたのかはわからない。

 今日も懲りもせずに、ぼくはあなたに愛しているというけれど、愛を本当に理解しているとは言い難い。

 見ず知らずの誰かよりあなたを優先するのに何ら迷いはない。もし仮に、あなたを救うために数人、いや数十人を犠牲にしなければならないとしても、ぼくはあなたを救う選択をするだろう。

 あなたが欲しい。何を差し出そうとも、何を犠牲にしたとしても。飽くなき欲求は満たされることはなく、さりとてそれを苦に思うこともない。

 秤に乗せることすら拒みたい。何物にも代えがたい。しかし、あなたとあなたを比較して、はたして自分はどちらのあなたを選ぶのだろうか。

 突きつけられる現実から目をそらすために、ぼくはこの世界から逃げ出すのだろう。

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