第3話
世界はきっと無色透明なのだと彼は言った。わたしの目から見る世界は大変苦しく、綺麗なものだとは決して口に出せないのだけれども、彼から見た世界は美しかったのだと思う。
世界の景色は、今までの出会いと別れでその色合いは決まると彼は言っていた。世界と自分とを同一視する幼少期。目の届く範囲が世界の全てで、その世界の色彩は目の届く範囲の風景で決まってしまう。そこから少し視野が広がって、人と出会って別れ、そして見える景色に自分の色が重なるのだそうだ。
だから、もし世界が辛く悲惨な景色に写って見えるのならば、それはあなたが辛く悲惨な色をしているのだ、とわたしに告げた。
わたしの世界の色はまた変わるのだろう。わたしの世界から彼は消えた。だから、彼がいなくなったこの世界は、また色を変えてわたしの目に写るのだろう。たとえそれがより悲惨な景色だったとしても、今はそれが楽しみでしょうがない。
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