第5話

 その後、私はI先生の勧めで精神療育手帳を取得した。

 初めてそれを受け取った時、「障害者」になったのだと自覚した。ちなみに障害年金は無事に認定された。


 自分が障害者になって特に強く感じるようになったのが、障害者の「差別しないで」という声への違和感だ。

 例えば「障害ではなく障碍か障がいと表記しろ」……どちらにしても同じではないのか。表記を変えたら障害が治るのか? 「障りがある」という意味での障害なのだから、どんな表記でもいいではないか。

 そして何かあると「私は障害者なのに」と声高に騒ぐ。例えば車椅子で移動しづらい、店員や職員が手伝ってくれなかったetc。自分が障害者として受けている恩恵は無視して、健常者と同じ扱いを求めている。なら、障害年金は返金し、映画や美術館、飛行機や交通機関などでの障害者割引も反対すべきではないのかと思う。

 人種差別に縁が薄い、単一民族の日本という国の中で、「障害者差別」は相手に何の言い訳も反論もさせない、最強の切り札だ。これを出されたら、何も言えない。何らかの事情で対応できなかったとしても、ひたすら謝るしかない。

 そして、まるで自分達の意見が全障害者の総意であるように世間に「差別するな」とわめき立てる姿は、同じ障害者である私から見ると恥ずかしいのだ。ひっそりと、人にできるだけ迷惑をかけずに生きていたい身からすると、彼らの主張は障害者であることを盾ではなく武器にして攻撃しているようで、いたたまれない。

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