第3話 働く

 なぜ働くのか? 人の役に立つためである、とするならば小説家はなぜ書くのか? 人の心に喜びをあたえるためである、とわたくしは思います。


「オナニー」


 だめ、ってこと?


「だめだめ」


 カクヨムにきて間もないころの作品は、アメショを失ったせいか手厳しい表現が散々出てくる。


「ああいうのはいいの」


 いいのですか!?!?


「いいの」


 今の方がダメダメですか?


「ダメダメ」


 じゃあ、やっぱり小説は斜に構えて書くべき?


「そうならないようにするには、恋をすることよ」


 あぁあぁあ;;


「オナニーはつまんない」


 オナニー文を脱するには何が必要なのですか?


「えーきちさんみたいな人に批評してもらって、発表すること」


 ははぁ。


「すっごい達筆なのね、彼」


 あれ? オンラインでしかお付き合いがないのに、よくご存じですね。


「以前習字を見せてもらったし」


 書のよさはわからないのだけれど、そうですね。


「じっくり見なさいよ」


 どこをどう見れば文字のよさに気づけるんです?


「どうって……自分で考えなさい」


 バランス、余白、まとまり、それぐらいしか。


「もう! 十三年前からひょっとして自信がない?」


 十三年前というと?


「生涯学習で習字の展覧会に行ったとき、おもしろいおもしろいって見てたでしょう」


 ああー、わたくしカナ釘文字が気に入っちゃって。


「そうだな。カナ釘文字って読みやすいし」


 草書体は読めないんですよ、何が書かれてるのかも。


「草書体は必須」


 あぁあぁあ;;


 古文書の読み方を習おうかなと思ったときもあるんです。


「草書体からにしなさいよ」


 そういう資料とか講座とかあります?


「ありますよ。読んでみないとわからないものがある」


 読み方から知りたい。


「読み方は書道の先生に、わかりませんか?」


 母と父が書道やってましたね。


「段位もちでしょう?」


 はい。


「じゃあ聞かないと」


 そっかー、身近なところに先生がいたな。


「先んずれば生まれたもの勝ち」


 なに言ってんだか草書体なみにわかりませんよ。


「とにかく、とにかく稀なケースだから草書体を読めるようになって」


 わかりました。


「ちゃんと記録に残してよ」


 あいあい。


「なんとなく、不器用ね」


 やります!


「あいあい、は認められないわ」


 イエスマム。


「それならいいけど」

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