番外編・雨音早貴の計画
晴奈のためにしていたことで、晴奈を不安にさせてしまうとは想定外だった。
梅原が着いてきたあの日。私は自宅へ戻るとすぐに晴奈にメールを送った。
「心配させてしまってすまない。梅原は私がすぐに察知してしまったから何も知らない。だから責めないでやってくれ。詳細は明日話す」
すると、すぐに返事がくる。
「分かりました」
可愛い犬の絵文字付きだ。私はそれを見て安心すると、すぐに携帯を手放した。機械に疎く、せいぜい連絡手段にしか使わない。それも、連絡先を登録しているのは晴奈と親戚か、以前海へ行ったメンバーのみだ。普段から、極力携帯は身体から離すよう心がけている。小さな画面を見ているよりも、身体を動かすか勉強をしている方が私の性に合っているからだ。
静かな部屋で目標水準まで勉強をこなすと、晴奈が持たせてくれたものを電子レンジに突っ込み温める。晴奈はそこまでしてくれなくてもいい、と私が言っても、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。有り難いし、そこまでしてくれる好意を受け止め、私も同じ気持ちでいる。
明日は、ちゃんと説明して納得してもらわないとな……。夜ご飯を食べ、再び勉強し寝る準備に取りかかる。部活も、勉強も、何事も疎かにしたくはない。すべてを完璧にこなす……それこそが私の人生の目標だ。だが、もう一つ大事なことがこの桜ヶ丘に入ってからできた。
後は寝るだけになって布団に入ると、晴奈からタイミングを見計らった「おやすみなさい」のメッセージがくる。それに返すと、ゆっくり目を閉じ、少しだけ晴奈の顔を思い浮かべるとすぐに眠りについた。
「そうなんですね……そういうことなら、分かりました。くれぐれも、体調だけには気をつけてくださいね?」
私の下手な言い訳に、晴奈は納得してくれた。あくまでも私の心配ばかりする彼女に、少しばかり後ろめたさを感じてしまう。取り繕うのは、彼女へのプレゼントのためなのに。
いつものように部活へ向かおうとすると、梅原に話しかけられた。珍しいなと思い立ち止まると、やはり相川のことだった。
「昨日の話聞いて、私もちーちゃんにプレゼントを渡したいなと思ったんだけど……。何か良いアルバイトないかな……?」
「そうだな……私のバイト仲間で経験豊富な奴がいるから、良さそうなの紹介してもらえないか頼んでみるよ」
「ありがとう……!」
ほっとする梅原の表情を見て、私も何故か安心してしまう。
「いよいよ、相川に伝えるんだな」
「えっ……何故それを!?」
「なんとなく、そうなのではと感じたんだ」
きっと、相川と梅原なら大丈夫だ。
「良い報告を待ってる」
「任せて!」
そう言った梅原七瀬の瞳には、以前に見た戸惑いの色など微塵も感じられなかった。私も、晴奈に喜んでもらうために頑張るか。
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