第126話 名古屋初ライブ

 ホテルに帰って、それぞれ休む。

そして、その翌日はアイドルイベントの当日だった。


 今日は15組のアイドルが出演するライブである。

朝の10時にホテルのロビーに集合する。


「おはようございます!」

「おう、おはよう」


 莉奈と友梨は今日も疲れを感じさせない笑みを浮かべている。

一方で、美穂はあくびをしている。


「なんで2人ともそんな元気なのよ。昨日遅くまで起きてたのに」

「えへへ。若さかな?」

「あんたと私は同い年みたいなもんでしょ」


 昨日は3人で遅くまでボードゲームをしていたらしい。

そういうの、泊まりの旅行では楽しいよな。


「まあ、行きますか」


 ホテルを出ると、電車に乗って会場へと向かう。

ここから20分ほどの名古屋の大須が会場だった。


「大須ってどんな所なんですか?」


 隣に座っている莉央が尋ねてくる。


「名古屋の秋葉原って言われている所かな」


 大須は秋葉原のような雰囲気がある。

コンセプトカフェやメイドカフェなどのオタク文化も発展している街である。


「へぇー、そうなんですね」


 俺たちは最寄りの上前津駅で降りる。

場所は大体把握しているので、俺が先導して歩いていく。


「ここが今日の会場です」

「おおー、結構大きいんですね」

「主催が張り切っていたからねぇ」


 そう言って、俺たちは会場の中に入っていく。

そして、そこには久しぶりに見る顔があった。


「堀さん」

「おー、四宮ちゃん! 久しぶりー!」


 俺に気づくとこっちに手を振りながら近づいてくる。


「よく東京からきてくれたよー」

「そりゃ、堀さんに言われたら来ますよ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん」


 堀さんはこんな軽い感じだが、このライブの主催しているイベント会社の社長である。


「みんな、この方が俺の先輩で今日の主催の堀智也さん」


 俺は3人に堀さんを紹介する。


「堀ですー! この子たちがWhiteだね。やっぱ、生で見てもかわいいね」

「「「よろしくお願いします」」」

「うん、よろしくね」


 堀さんは元々俺と同じ会社でプロデューサーをしていた。

前の会社にいた頃の先輩になる。

堀さんも優秀で数多くのアイドルを輩出している。


 2年前に独立して地元の名古屋でイベント会社を経営しているのだ。

俺の噂を聞いてオファーをかけてくれたらしい。


「期待してるよー! 控室、そっだから」

「わかりました」


 俺たちは控室へとむかう。


「四宮ちゃんが一から育てたアイドル、お手並拝見ですな」


 俺たちの後ろ姿を見ながら、堀さんは言った。

かつて、伝説のプロデューサーとまで言われた天才。

四宮渉が無名からここまで引っ張り上げたアイドルWhiteの名古屋初舞台が開幕するのであった。

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