第125話 焼きうどん
ホテルに到着すると、自分の部屋に荷物を置く。
「さてと、行きますか」
少し座って休憩した後、俺は部屋を出る。
莉奈たちとご飯を食べる約束をしていたのである。
部屋を出て、ロビーに向かうとそこには莉奈たちの姿があった。
「お待たせ」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「じゃあ、行こうか」
ホテルを出ると、地下鉄に乗るために駅に向かう。
「電車に乗るんですか?」
「うん、ちょっとだけだけどね」
「知り合いがやっているお店でしたっけ?」
「そうそう、世界一美味い焼きうどんがあるんだよ」
俺が名古屋に来た時は必ず、立ち寄る所がある。
そこの焼きうどんが絶品なのである。
「四宮さんのお知り合いなら心配入りませんね」
そう言って、莉奈が笑みを浮かべる。
地下鉄に乗って3駅で降りる。
「こっちだよ」
俺が3人を先導して歩く。
そして、商店街の一角に到着した。
「すごい、雰囲気があるお店ですね」
「確かに、こんな雰囲気の所東京じゃ中々無いよね」
「そうだね」
3人は期待しているような様子だった。
「おばさん、来たよー」
俺たちは店内へと入る。
「あら、渉くん。いつこっち来たの?」
「今日こっち来ました」
「そうかそうか。来るなら連絡してくれたらよかったのに」
そう言うと、おばさんは俺の後ろに視線を移す。
「今日は、可愛い子たち連れてるんだねぇ」
「「「こんにちは」」」
莉奈たちはぺこりと頭を下げる。
「俺が今、仕事でプロデュースしてるアイドルのWhiteと言います。明日からこっちでライブがありまして」
「そうか、前より楽しそうな目をしてると思ったら仕事変わったのかね。今日は気合い入れて作ろうね。何食べる?」
「焼きうどんを4人分お願いします」
「あいよ。座ってまってな」
俺たたちはテーブル席に座って焼きうどんが完成するのを待つ。
「四宮さん、本当に知り合い多いんですね」
隣に座る莉奈が言った。
「ここは、俺の友達が昔からお世話になっている所で一回連れてきてもらったんだ。それからはもう、ずっとここに寄ってるかな」
あれはもう2年くらい前の出来事だろうか。
あの焼きうどんの味を自分で再現しようと思っても出来なかった。
「お待たせー。焼きうどんだよ」
お皿に乗った焼きうどんから湯気が上がる。
「ありがとうございます」
「「「頂きます」」」
箸で焼きうどんを持ち上げて口に運ぶ。
「美味しい……」
「四宮さん、これめちゃくちゃ美味しいですね」
「そうなんだよ」
俺も焼きうどんを食べ進める。
「この味、自分じゃ出せないんだよなぁ」
「当たり前だよ。私が何年ここで焼きうどん焼いてると思ってんだい」
お茶を持ってきてくれたおばさんが言った。
「それは、失礼しました」
「めっちゃ美味しいです!」
莉奈たちが興奮気味に味の感想をおばさんに伝える。
「ありがとう。おかわりもあるからいっぱい食べておくれ」
結局、俺たちはおかわりしてもう一皿食べてしまった。
「おばさん、今日もありがとう」
「いいよ。お嬢さんたちもまたこっち来る時には寄ってくれたら嬉しいよ」
「はい! 絶対また来ます!」
俺はお会計を済ませる。
「そういえば、倉木くんは元気かい?」
「ああ、あいつ最近来てないんですか?」
「三ヶ月前くらいに一回来てくれたかなぁ」
「そうなんですね。元気にやってますよ。近々こっち来るみたいなんで言っておきます」
「ああ、そうしてくれ。じゃあ、渉くんも体にきいつけてな」
おばさんに見送られて俺たちは店を出た。
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