第127話 名古屋初ライブ②

 名古屋での初ライブが幕を開ける。

正直、名古屋ではそこまで知名度がある訳では無い、と思っていた。


 しかし、それはどうやら間違いであったと気付かされる。


「四宮ちゃん、凄いね。彼女たち」


 Whiteの出番を見守っていると、いつの間にか隣に堀さんが居た。


「ありがとうございます」

「全く別の地だっていうのに、もう会場を自分たちのものにしちゃっているよ」


 今回のライブも満席である。

他のアイドルも出演しているので、もちろん全てがWhiteの力というわけではない。


「ぶっちゃけ、今回のライブもWhiteが目当てって人がほとんどだと思うよ」

「そうなんですか?」

「雑誌にテレビ、ラジオってメディアの露出がすごいからね。東京で突如頭角を現した、Whiteの噂はこっちまで届いてたよ」


 Whiteの名前は自分達が思った以上に広がっていたらしい。

やはり、メディアの力を侮ってはならないと痛感する。


「けど、相変わらず四宮ちゃんのプロデュース力はエグいわ」


 そう言って堀さんは苦笑いする。


「俺は、周りに恵まれているだけですよ」

「それが四宮ちゃんの凄いところなんだよ。ただ、営業しているだけじゃ、ここまで色んな人を動かせない。四宮ちゃんには人を動かすほどの魅力があるんだよね」


 人を動かす。

そこには、人柄や信頼関係など様々な要素が含まれる。


「それに、個々の能力を活かしたプロデュース。さっすが、伝説を作った男だよ」


 センターの莉央はトークが上手い。

MCでの人を惹きつける喋り方を心得ているようだ。


 そして、クールな印象を与える美穂は歌唱力はずば抜けている。

ソロパートでそれをうまいこと引き出している。


 最後に、友梨。

可愛らしい見た目からは裏腹にキレのあるダンス。

身体能力から優れているのだろう。


 全て、個々の能力を最大限に活きるように計算されている。

それを全てやってのけているのは他でも無い。

ここに居る“四宮渉“である。


「そんな、大袈裟な」

「そんなことないさ。四宮ちゃんの作ったWhiteはまさしく“本物“だよ」


 完全に無名だった地下アイドル。

それを一年足らずでここまで押し上げたのは、もちろん彼女たちの努力もある。


 しかし、それと同時にこの男の存在を忘れてはならない。

影の天才、四宮渉の存在を。



 ♢



 名古屋ライブも盛況なまま終了した。

その後の特典会からもWhiteを目当てで来てくれたファンが多くいたようだ。


「みんな、お疲れ様」

「「「お疲れ様でしたー!」」」


 メンバーは額にかいた汗を拭う。


「お疲れー! いやぁ、最高だったよ!! ありがとう!」


 堀さんがメンバーに伝える。


「こちらこそ、呼んでいただきありがとうございました」

「いやいや! また、お願いね!!」


 名古屋初ライブは大成功に終わった。

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