第120話 イメージキャラクター

「イメージキャラクターですか?」

「そうだ。この企画を推進していく上で、必要になると思ってな」


 政治的にもグリーンなイメージを付けていきたいのだろう。


「うちのWhiteでいいんですか?」


 知名度を上げて来たとはいえ、全国的に名前が知られているかと言われたらそうではない。


「四宮君の所だからこそ頼みたいんだ。よく分からない所のアイドルを起用したいと言ったら反対意見もあるだろうが、君の所を使うと言って文句を言って来る奴は居ないだろう」


 政治というのは難しいらしい。

敵対する派閥は隙が生まれたら、ここぞとばかりに攻めてくる。


「それは、どういう意味ですか?」

「四宮くんを敵に回したい人間は、少なくともうちの政党には居ないという事だよ」


 森清吉はニヤリとした笑みを浮かべた。


「四宮くんを敵に回したりしたら、政党でも大きく力を失う事になるだろう」

「それは、買い被りすぎでは?」

「いや、そうでもないと思うがな。最近、うちの幹事長と仲良くしてるらしいじゃないか」

「まあ、そうですね。最近は仲良くさせてもらっています」


 明成党の幹事長、天童進とはたまに食事するくらいの仲にはある。


「今、うちの党で四宮くんの名前を知らない議員は居ないよ」

「僕、ただのアイドルプロデューサーなんですけどね……」


 ただの地下アイドルのプロデューサーがまさかここまでの影響力を持つとは思うまい。


「ただ、この話はうちにとっても利益があります。一度、持ち帰ってもよろしいでしょうか?」


 さすがに、政治が絡んで来る事なので、俺の一存では決められない。


「分かった。出来るだけ早めに答えを貰えると助かる」

「承知しました。早急に協議させて頂きます」

「よろしくたのむ」


 俺は文科省を後にすると、その足で事務所へと向かった。

事務所では作業をしている社員が何人か居る。


 そして、そのまま社長室の扉をノックする。


「四宮です。少し、お時間よろしいでしょうか?」

「ああ、入ってくれ」

「失礼します」


 俺が社長室に入ると、望月さんはパソコンの画面から視線を上げた。


「どうかしたかね?」

「社長に少し相談したい事がございまして」

「まあ、座ってくれ」

「ありがとうございます」


 俺は社長室のソファーに腰を下ろす。


「それで、相談というのは?」

「これです」


 先程、文部科学大臣にもらった資料の最後のページを開いて社長に見せる。


「国でスクールポリス制度を施行する動きがあるそうなんですが、そのイメージキャラクターをWhiteにやって欲しいと文部科学大臣から頼まれまして、政治的な事が絡んでるので、社長にも確認してもらおうと」


 俺は文科省で聞いて来た事をそのまま社長に伝えた。


 すると、社長は大きく息を吐き出した。


「ちょっと待て。まず、君は文部科学大臣と知り合いなのか?」

「ええ、そうですが、それが何か?」

「そうか。もう、私が悪かった。君の人脈は意味が分からない……」


 再び社長は息を吐く。


「やってもいいですか?」

「いいに決まってるだろう。これはWhiteを全国に広げる大きなチャンスにもなるだろう」

「ありがとうございます。早速、進めさせて頂きます」

「全く、文科省の役人、それも大臣となんてどうやって出会うだ……」

「まあ、色々とありますので」

「その色々を知りたいんだけどな」


 社長はもう色々と諦めた表情を浮かべていた。


 俺は、社長室を後にすると大臣にイメージキャラクターを引き受ける旨のメールを送った。


【あとがき】

本日より、ニコニコ漫画様で本作のコミカライズがスタート致しました。

コミカライズ版も何卒よろしくお願い致します!

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