第91話 豪華メンバー

 俺は3枚のデザインを見比べていた。


「この画像、俺の方に送ってもらうことは出来ますか?」

「もちろん大丈夫ですよ。後ほど送らせていただきますね」


 琴美はタブレットを操作しながら言った。


「細かい修正点はあるかもしれないけど、ほとんど修正はないと思うよ」

「分かりました。ありがとうございます」

「こちらこそありがとう。急に仕事頼んだのに」


 俺が琴美に仕事を頼んだのが二週間ほど前であった。

それなのに、このスピードで仕上げてくれるとはさすがである。


「四宮さんの頼みともあれば速攻で仕上げますよ」

「本当、助かるよ。送ってもらったデータをうちの社長に確認してもらってから修正があれば伝えるよ」

「分かりました。じゃあ、四宮さんのスマホに送りますね」


 琴美はタブレットの操作を開始した。

そして数分後、俺のスマホが振動する。


「ちゃんとファイル開けます?」


 琴美からのメッセージには画像ファイルが添付されていた。


「うん、ちゃんと開けてるよ」


 俺はスマホでファイルが開けることを確認した。


「じゃあ、今日はこの辺で終わりにしようか」

「分かりました」


 そう言うと、琴美はタブレットを仕舞った。

俺は伝票を持つと、お会計を済ませて喫茶店をでた。


「ごちそうさまでした」

「いや、大丈夫よ。経費になるし」


 打ち合わせの喫茶店代は経費として落とすことが出来る。


「じゃあ、私はここで。また、飲みにでも誘ってください!」

「分かった。近いうち連絡する」


 琴美は駅の方へと歩いて行った。

俺はそれを見送ると、事務所へと向かう。


「おはようございます」


 事務所ではすでに何人か仕事をしている。

そのまま、俺は社長室へと向かった。


「社長、今よろしいですか?」

「ああ、そっち座ってくれ」


 望月さんはソファーに座るように促した。

そして、望月さんは俺の対面に座った。


「例のオーディションのポスターデザインが上がってきましたので確認をお願いします」


 俺はパソコンからデザインを3枚表示させると、望月さんに見せた。


「凄いな。豪華になったな。このイラストは?」

「倉木そらっていう漫画家です」

「この字は?」

「綾辻秀さんという書道家さんです」


 そこまで言うと、望月さんは天井を見上げた。


「まさかとは思うが、デザインは琴美さんか?」

「はい、そうです」

「もう、驚くというより呆れたな」


 額に手を置いた望月さんは口にした。


「あの、何かまずいことしました?」

「いや、この一枚に君の人脈が詰まっていると思ってな。倉木といえば有名な漫画家だし、綾辻さんは俺でも名前は聞いた事のある書道家だし、琴美さんはいうまでもない」


 琴美さんは日本を代表するようなデザインの賞を受賞したと聞いた。

確かに、それだけ聞いたらすごく豪華なポスターになってしまったわけだ。


 ポスターの右下にはそれぞれの名前も入っている。


イラスト:倉木そら

題字:綾辻秀

デザイン:宮崎琴美


 この3人の名前が並ぶことがどんなに凄いことか、この業界に居る人間なら気づく人も少なくないだろう。

四宮はまた無意識にとんでもない人脈チートを発揮してしまったわけであった。


「俺はどのデザインでも素晴らしいと思うから、四宮くんに任せるよ」

「分かりました。では、このまま進めさせていただきます」


 そういうと、俺はノートパソコンを閉じた。

この後はWhiteのメンバーとのミーティングがこの事務所で入っていた。


 現役アイドルの意見も聞いてみるとしよう。

そんなことを思いながら、俺は社長室を後にした。

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