第61話 映画後

 俺たちは座席の番号を確認して、席に着く。

ポップコーンは俺と瑠奈の間に置いた。


「楽しみだねー」

「そうだな」


 あまり見ないジャンルの映画なので、新鮮な気持ちはあった。


 俺はミステリーやSF映画はたまに見るのだが、今回見るのは恋愛映画だ。

これは瑠奈の要望によるものだが、別に嫌ではなかった。


「始まるみたいだな」

「うん」


 映画館のスクリーンは映画の予告編から本編に入ろうとしていた。


 ここからは約2時間の本編が始まった。


 作家を目指す青年とその青年の夢を応援する少女との恋物語。

人生というのは常に上手く行くとは限らないものである。


 中々上手くいかない夢を掲げると苛立ちも覚える。


 夢と葛藤、恋をリアルに描写されていると感じた。


 普段なら見ないジャンルだったが、これはこれで面白い。


 やがて2時間の映画は幕を下ろした。


「面白かったね!」

「そうだね。これは普通に考えさせられたな」


 描写もかなりリアルで個々の心情が実に面白いと感じた。


「でも、私はお腹空いたよ」

「さっきポップコーン食ってただろ」

「あれは、おやつみたいなもんでしょ!」


 瑠奈にとってポップコーンと昼飯は別腹らしい。

まあ、俺も腹は減ってきた。


「じゃあ、飯食いに行くか」

「いいね! 行こう!」

「ナンのカレーでいい?」

「あり!」


 この辺りには俺がたまに行くカレー屋があった。


 俺たちは映画館を出ようと歩き始めた。


「あれ? 四宮さん?」


 聞き馴染みのある声で後ろから名前を呼ばれた。

俺と瑠奈が一緒に振り向いた。

瑠奈も四宮さんだから癖なのだろう。


「あー、やっぱり四宮さんだ!」

「おう、美穂たちか」


 そこには瑠奈と美穂メンバーたちの姿があった。

俺が休みということは、Whiteも休みだ。


 休日まで一緒とは、相変わらず仲がいい。


「友梨は一緒じゃないんだな」

「ええ、友梨は別の予定があるらしくて」


 友梨だけ居ないのは珍しいと思ったが、予定があるなら納得もする。


「お前たちも映画か?」

「はい、そうです。そちらは、彼女さん……ですか?」


 莉奈がちょっと目を細めて俺に尋ねてきた。


「いや、俺の妹だよ」

「四宮瑠奈です。この方たちがお兄ちゃんがプロデュースしてるアイドルさん?」


 瑠奈は微笑みを浮かべながら言った。


「そうだよ」

「音坂莉奈です」

「私は、佐藤美穂です!」


 2人も名乗ってペコリと頭を下げた。


「でも、意外です。四宮さんが休日に妹さんと出かけてるなんて」

「まあ、珍しく休みが被ったんでたまにはと思ってな」


 俺も若干のシスコンが混ざってる自覚はしているが、毎回出かけるわけでもない。


「俺たち、飯行くけど一緒に行くか?」

「え、いいんですか?」

「お兄ちゃんがいいなら私はいいですよ」


 瑠奈はそう言ってくれた。


「じゃあ、お言葉に甘えてご一緒させて下さい」

「決まりだな! 飯行こう」


 俺たちは一緒にご飯に行くことにした。

 

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