第60話 映画館へ

 俺は一通りの準備を終えた。


「準備終わったけど」

「早いな。私も終わってるから行こうか」

「はいよー」


 男のする準備なんてたかが知れている。

最悪、10分もしたら終わるのではないだろうか。


 俺たちは家を出ると最寄り駅まで向かう。

映画を見るなら池袋がいいという話になっていたので、最寄りから池袋へと向かう。


「お兄ちゃんって背高いよね」


 瑠奈がつり革を掴んでいる俺を見て言った。


「そうか? 男だったらこのくらい普通だと思うけど」


 俺は170ちょっとしかない。

まあ、瑠奈は160無かったと思ったので、相対的に高く見えるのだろう。


「ふーん。身長高い人ってなんかいいよね」

「惚れるなよ」

「馬鹿じゃないの?」


 瑠奈がジト目で俺を見つめてきた。


「それは失礼しました」


 そうこうしているうちに池袋駅に到着した。

そこから、俺たちは映画館へと向かう。


 池袋は慣れているので映画館の場所も把握していた。

しばらく歩いて映画館に着く。


「俺、チケット発券してくるよ」


 予約してクレジット決算もしているので、あとは発券するだけである。


「じゃあ、私何か飲み物買ってくるよ。お兄ちゃんは何がいい?」

「アイスコーヒーで。これで買ってこい」


 俺は自分の財布を渡した。

妹なので財布ごと渡しても問題ないだろう。


「え、いいよ。チケットも奢ってもらったし、ここは私が」

「いいから、女の子は黙って財布仕舞っていてください」

「お兄ちゃん、モテるな」


 そんなことを言いながら瑠奈は俺の財布を受け取った。


「これで本当にモテてくれたらいいのだがな」

「アイドルさんたちがいるじゃん」

「あれはモテているというより懐かれているだな」


 どちらかといえばその表現の方がしっくりくるのではないだうか。


「まあ、いいや。買ってくる」

「おう」


 俺はチケットの発券に向かう。

スマホで番号を確認しながら発券機で大人のチケットを2枚発券した。


「お兄ちゃん、買ってきたよー」

「こっちもだ」


 瑠奈はドリンク2つとポップコーンを持っていた。


「ポップコーンも買ったんだな」

「定番ですからね。だめだった?」

「いや、そんなことはない。俺も好きだ。はいこれ」


 俺はチケットの一枚を瑠奈に渡した。


「それ、持つよ」

「ありがとう」


 チケットと引き換えに俺はポップコーンが乗ったプレートを受け取った。


「もう、入場できるみたいだから行こうか」


 映画館のスタッフが入場の案内をしていた。


「うん、そうだね」


 俺たちは流れに沿って中に入って行く。

座席は、真ん中より少し後ろの席を取った。


 このあたりが個人的には1番見やすい気がする。


 スクリーンには上映前の予告などが映し出されていた。

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