第59話 兄妹の朝

 俺は新宿駅までメンバーを送る。


「それじゃあ、気をつけて帰ってね」

「はい、お疲れ様でした」

「うん、お疲れ様ー」


 俺はメンバーとは反対方面の電車に乗る。

新宿駅からは一本で帰宅することが可能だ。

こういう所は便利だと思う。


「次は対バンライブだな」


 俺はスケジュール表を見ながら思う。

来週の対バンライブがWhiteの次のイベントであった。


 そこから、20分と少し電車に揺られると、最寄り駅に到着する。

最寄り駅からは徒歩で帰宅する。

10分程度の道のりなので、さほど遠くはないだろう。


「ただいまー」

「おかえりー」


 誰かにおかえりと言ってもらえるのは案外悪くはない。

一人はたまに寂しくなる。


 妹でも、居ると居ないではかなり違うのだろう。


「ご飯食べた?」

「いや、まだ食べてないけど」

「よかった。作ってあるから適当に食べてよ」


 キッチンの方からは何やらいい香りが漂って来る。


「いつもありがとうな。助かるわ」


 帰ってきてすぐにご飯が食べられる。

これはすごくありがたい。


 一人暮らしの時は自炊など滅多にしなかった。

誰かが作ってくれたものを食べれるのは嬉しい。


「いいよー別に。その代わり他の家事はよろしくねー」

「はいよー」


 こういう分担も兄妹だからこそストレス無くできるのではないだろうか。


「てか、お兄ちゃん明日のこと忘れてないよね?」

「ああ、もちろん覚えてるよ」


 明日は週末。

俺と瑠奈の休みが重なっている。


 俺たちは映画に行く約束をしていた。


「ちゃんと、朝起きてね」

「分かってますよ」


 基本、俺は休みの日は寝ているので、その心配をしたのだろ。

しかし、予定が入っていれば別である。

ちゃんとアラームをセットして起きる。


「ならいいけど」


 俺は食事を済ませると、今日は早めに休むことにした。



 ♢



 翌日、俺はアラームで目を覚ました。

時刻は朝の8時過ぎだ。


 休日に起きるには少し早いくらいだろうか。


「おはよう」

「ん、おはよー」


 瑠奈は既に起きていた。

女の子は準備に時間がかかるというが、大変だなと改めて思う。


 俺がやることといえば、髭を剃って髪の毛を整えるくらいだろう。

それに比べたらかなりやることは増えるのだろう。


「朝ごはん、昨日の残り物だけどいい?」

「全然大丈夫だよ」


 俺たちはとりあえず、朝食を取る。

朝食をとるのは日課になっているので、毎朝必ず食べるようにしている。


「食べたらお兄ちゃんも準備してよね」

「ああ、俺の準備はすぐ終わるから大丈夫だよ」


 着る服も既に決めてあるため、やることは限られてている。

瑠奈は大体の準備は終わらせているようだ。

薄っすらとメイクもしていた。


「あ、もっとちゃんとメイクしたほがいい?」

「いや、大丈夫だろ。お前は素材はいいし」


 我が妹ながら顔のパーツは整っていると思う。


「ちょっ照れるね」


 瑠奈は微笑みを浮かべながら言った。

 

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