第48話 ざまあされたユメミヤ

 四宮がユメミヤのプロデュースから離れて半年以上が経過しようとしていた。

ユメミヤのメディアへの露出は徐々に減ってきていた。


 それも、新しいプロデューサーは学歴だけの男だった。

仕事は全くできないと言ってもいい。


「最近、四宮の奴また名前を聞くようになったな」

「みたいですね」


 ユメミヤの事務所の社長と副社長が話していた。

流石に四宮も目立ち過ぎたのだろう。


 この業界は広いようで狭い。

噂は一瞬のうちに広がっていく。


「呼び戻した方がいいんじゃないか?」

「所詮は、悪あがきでしょう」


 この時、二人は四宮のことはあまり気にしていないようであった。


「ねぇ、私たちこのままで大丈夫なのかな?」


 ユメミヤのメンバー3人は話し合いをしていた。


「大丈夫って?」

「だって、あいつが居なくなって仕事も無くなったし」

「ああ見えて優秀だったのかもね」


 今更になって四宮がどんなに重要なポジションを担っていたかが分かったのだろう。

正直、四宮渉という男は業界でも有名人だった。


 無名から大規模ライブまで導いた影の天才。

そう、賞賛する業界人は多く居た。


 先を見通す目と異常なほどの人脈チート。

きっと、四宮の右に出るものは居ないだろう。

常に的確な方向にアイドルたちを導いていた。


「最近、Whiteっていうグループが出てきてるけど、あのプロデューサーあいつらしいよ」

「え、あのグラビア奪われた?」

「うん。あいつのことだから集央出版にもコネがあるんでしょう」

「最近、やけに勢いがあると思ってたけど……」


 四宮の噂はユメミヤのメンバーのところにも回ってきていた。


「今のプロデューサー、顔はいいけどぶっちゃけそれでけじゃん?」

「確かに、てか、顔ならアイツだって悪くなかったし」

「何、ああいうのが好みなの?」

「別にそんなんじゃないけど」


 おそらく、ユメミヤはこのままだと失速する。

どう転んでもいい方向に進むのは困難な状況である。


「いっその事、アイツの事務所に移籍するってのは?」

「許してくれるかな? 私たち、ひどいこと言っちゃったし」

「確かにそうだよね」


 今更合わせる顔がないのは分かっていた。

自分から突き放しておいて、自分たちが窮地に陥ったら助けを求める。

そんな都合のいいことが許されるだろうか。


 事実、四宮には泣きつかれてもユメミヤを再びプロデュースする気はさらさらなかった。


「アイドルって、難しいんだね」


 ユメミヤは改めてこの業界の厳しさを実感するのであった。


「Whiteか……ちょっと羨ましいかもな」


 メンバーは四宮が居なくなったことで四宮の大切さを理解した。

本当に大切なものは失ってからでないとわからない。

きっとそういうことなのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る