第44話 見本誌到着

 莉奈と出かけた翌日のことである。

今日は夕方から秋葉原の会場でライブが入っている。


 俺はその前に事務所へ出勤していた。


「四宮さん、出版社から荷物が届いてましたよ」


 同僚が俺のデスクの所に置いてあった段ボールを指さしながら言った。

差出人は集央出版編集部となっていた。


「お、届いたみたいだな」


 中身は見本誌と書かれていた。

恐らく、来月発売の週刊少年ブレイブの見本誌が出来上がったのだろう。


 俺は段ボール箱を開けた。


「いい感じだな」


 段ボールの中には10冊の見本誌が入っていた。

その中の一冊を手に取り、ページをパラパラとめくっていく。


「うん、きっと大丈夫だろう」


 確認すると、Whiteのページは4ページになっていた。

当初の予定では2ページだったはずだ。

まあ、多いに越したことはないので文句はない。


 そして、ユメミヤのページは1ページの中の一部にしか掲載されていなかった。

やはり、徐々にユメミヤのメディアへの露出が減ってきていると感じる。


「そろそろ行くか」

 

 午後になると俺はWhiteのライブ会場へと向かう。

見本誌の中から3冊をカバンに仕舞った。


「お疲れさまです」


 会場に着くと既にWhiteのメンバーは準備を進めていた。


「お疲れー」


 開演時間まではあと1時間ほどある。


「集央出版から見本誌届いてたから持ってきたよー」


 俺はカバンの中から週刊少年ブレイブを取り出すとメンバーに渡した。


「ありがとうございます」


 受け取ったメンバーはパラパラとページをめくっていく。


「すごい、4ページになってる」

「本当だー」

「なんか雑誌に載る実感って湧かないもんなんですね」


 マジマジと雑誌に載った自分たちを見ていた。


「大丈夫そう?」


 俺はメンバーたちに尋ねる。


「はい!! 大丈夫です」

「じゃあ、あとは発売を待つだけだね。それはあげるよ。あと、もう告知していいみたいだから」


 出版社の方から告知の許可は出た。


「じゃあ、今日の夜にでも告知します!!」

「私もー」


 メンバーたちは今日の夜に告知することを決めた。


「じゃあ、今日もライブ頑張ろう」

「「「はい!!」」」


 ありがたいことに、今日のライブは満席となっていた。

これも、四宮が今までやってきた戦略のおかげかもしれない。


「そろそろ、次のスッテプに進む頃かもしれないな」


 四宮の中ではここまで来れば十分な成果だと思っている。

まだ半年も経っていないのにここまで集客できるようになるとは正直、予想外だった。


 このまま行けば地下から抜け出すことだって夢ではない。

ユメミヤの時はギリギリのところだった。


 それでも、地下と地上の狭間あたりまで導けばこの業界では褒められることだ。

それほどまでに難しい業界なのである。


「ワンマンライブの準備を進めるか」


 こうして、四宮は次の戦略へと乗り出すのであった。

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