第35話 大型企画始動

 俺はメンバーたちの対面の椅子を引いて座る。


「まずはこれからだな。この前撮影した写真が送られてきた」


 そう言って印刷された写真をテーブルの上に並べた。


「一応、望月さんの許可は出たから皆が異論なければって感じなんだけど」


 メンバーは写真をマジマジと見つめていた。


「流石は世界的にも有名なカメラマンさんですね」


 莉奈が自分の写真を手に取りながら言った。」


 確かに、それぞれの魅力が引き出されているとは思う。

やっぱり、あいつはただのふざけたヤツでは無かった。


「めっちゃ可愛く撮れてる……」


 美穂も感動したような声を上げていた。


「私も、凄いと思います」


 友梨は目を輝かせていた。


「じゃあ、これでオッケー出しても大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」

「私も」

「異論なしです」


 3人ともこれで問題無いようである。


「じゃあ、集央出版にはこれでオッケーしておくよ」


 後で福田さんにメールを入れておくことにしよう。


「次の話はこれなんだけど」


 俺は先ほど望月さんから貰った資料をコピーしておいたので、3人に渡した。


「え……」


 その資料を見た瞬間に3人の表情は変わった。


「俺としては悪い話ではないと思うんだけど」


 条件としては決して悪くはない。

むしろ、知名度アップにつながるだろう。


「これも、四宮さんが取って来たんですか?」


 莉奈が俺に疑問をぶつけた。


「流石に俺もここにコネは無かったよ。これはSNSを見た担当の人が事務所にオファーしてくれたんだ」

「びっくりしました。こんな大手にもコネがあるのかと」


 莉奈はそう言いながらも少しがっかりしたような表情を浮べていた。

いや、何で?


「でも、実際四宮さんならありそうだもんね」


 美穂が資料に目を通しながら言った。


「まあ、これから徐々に作っていきたいとは思うけどね」


 俺としてはコネはあるに越したことはない。

作れるもんは作っておきたいのだ。


「いやいや、四宮さんがこれ以上コネ作って言ったら最強になっちゃうじゃん」


 莉奈が少し呆れたように口にした。


「まあ、それはいいとして」

「いいんだ……」


 莉奈がボソッと言った。


「この話受けるか?」

「「「受けます!」」」


 3人は声を揃えて言った。


「分かった。じゃあこの話も受ける方向で進めておくわ」

「ありがとうございます」

「俺からはこのくらいだけど、皆からは何かあるか?」


 俺は皆に尋ねる。


「あ、あの、四宮さんの次に休みっていつですか?」


 莉奈が少し頬を紅葉させて聞いてきた。


「へ? 俺の休み!?」

「は、はい」


 その意図はよく分らないが、俺は手帳を開いた。


「多分、来週の火曜と木曜は休みだな」


 この仕事をしてると基本的には平日休みが多くなる。


「空いてますか?」


 莉奈が続けて聞いてくる。


「お、今日の莉奈ちゃんは積極的だねぇ」


 美穂はニヤニヤしていた。

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