第23話 原宿へ

瑠奈は俺の話をボーと聞いていた。

まだ朝だから頭が回っていないのだろうか。


「そんな若者の街におじさんが行ったら浮くよ?」


 あ、瑠奈はちゃんと俺の話を聞いていたらしい。


「まあ、若い子と行くから大丈夫だろ」

「お兄ちゃん、まさか未成年に手を出したとか……それだけはやめてよ」


 瑠奈が俺をジト目で見てくる。


「そんなんじゃないって。仕事だよ」

「ま、家族が犯罪者にならないならいいけどさー」


 瑠奈は冗談交じりに言った。


「犯罪になるようなことはしないのでご心配なくー。ごちそうさん」


 俺は朝食を食べ終わった。


「あ、今日は私休みだからやっておくよ。お兄ちゃんは仕事いってらー」

「じゃあ、お言葉に甘えようかな。助かる」

「いいよいいよ」


 俺は食器をシンクに移動させておいた。

そこから、準備を整える。


 歯を磨き、髪の毛を整え、髭を剃る。

この歳になると髭剃りが一番時間がかかったりする。

いっそのこと、髭脱毛でもしてやろうかと思うこともある。


 そして、部屋に戻るといつものスーツに着替えた。

ちなみに、俺はまともな服はスーツしかない。

 まあ、スーツが好きというのも少なからずあるが。

着替え終わると10時半くらいだった。


 ここから原宿までは30分ちょっとかかると思った。


「早めに着いとくか」


 女の子たちを待たせるというのも気が引ける。


「行ってくるわー」

「はーい」


 適当なスニーカーを履いて玄関を出る。

スーツにも履いてもおかしくないスニーカーを選んだつもりではある。


 自宅の最寄り駅までの20分くらいの道のりを歩く。

この距離が遠いと思うか近いと思うかは人それぞれだと思うが、俺は歩くの面倒だと思っている。


 しかし、運動不足の俺にとってはこのくらいの距離は歩いた方がいいのかもしれない。


 駅に到着すると、原宿方面の電車に乗る。

そこから、30分ほどは電車に揺られる。


 電車内は意外と暇だ。

スマホを開いて適当にSNSを眺める。

最近の流行りや動向を見ておくこともこの業界で登って行くのは大切である。


 おじさんには理解に苦しむ流行りもあるが、流行りには乗っておいた方がいい。


「お、もう次の駅か」


 気づけば、原宿まで残すこと一駅になっていた。

危うく乗り過ごす所だった。


「まだ時間はあるか」

 スマホの液晶に表示されている時間は11時半だった。

待ち合わせの時間までは少し時間があるが、20分も待てばいいくらいだろう。


 あの子たちは意外と時間にしっかりしている。


『もうすぐ着くから適当に時間潰して待ってる』


 俺はWhiteのグループにメッセージを送っておいた。


『私たちも向かってます!!』


 莉奈からすぐに返信があった。

私たちもってことは一緒に来るのだろう。


「仲いいなあいつら」


 俺は原宿駅で降りると改札を抜けた所で3人を待った。

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