ごわりさま

 そうそう。

 行商で出向いた村に、古いやしろがありましてね。

 村人に尋ねてみますと、ごわりさまという神様を、まつっているとのことでした。


 何でも、菓子や餅から、財産、土地まで、物を分けるときに、この神様へお願いすると、争いごとが起きないそうです。


 ものを分けるときに、取り分に納得できない者が出てくるのは、よくある話でございます。

 たとえば、ひとつの菓子を分けるときに、まったく同じ大きさに分けるのが、難しいときがございましょう。

 そういうときに、この神様にお願いをしておきますと、取りすぎた者にはそれに応じた不幸が訪れ、逆に少なすぎた者には、それに応じた幸福が訪れる。

 取り分の天秤を整えてくださる、神様なのでございましょうな。


 どのような不幸が、菓子を取りすぎた者に、訪れるのかですって?

 さあ、手前にはわかりかねますが、蚊にでも刺されるのではないでしょうか。

 なかなか霊験れいげんあらたかで、その社にはずいぶん遠くからも、お参りに来る者が多いそうでございます。


 そうそう。

 お供え物が変わっておりましてね、何でも物差しをお供えするそうで。

 村人が教えてくれました。

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