野良メイドにアピールだ!
新しい主人の定まっていない野良メイドの、りえ・久美子・範子の3人衆。
俺、新しい主人に立候補しようかな? 3人まとめて養っちゃおうかな?
そしていろいろとご奉仕してもらうかな! うん。ありだ。ありよりのあり!
でもこんななりの俺にワイルドさなんて醸し出せるのだろうか?
いや、無理だろうな……悲しいけど、俺、美少女なんだ……。
漢の中の漢だということを、メイド3人衆に分かってもらうのは至難の業だ!
せめてワイルドさを演出する方法があればいいんだけど……。
そうだ! 筋トレだ! 筋トレすればアピれる! よし、今直ぐ筋トレだ!
俺は、はなしを続けながらも1・2・3と、スクワットをはじめた。
「真壁が新しい主人でないのは分かったよ! (はぁはぁ)」
「うん。分かってくれて助かるよ」
真壁にはメイド3人衆の新しい主人になる野心は全くない。
漢の中の漢であることを全くアピールしていない。
メイドをゲットしたければ、今は筋トレするべきなのに!
「りえさん、新しい主人はもう見つかった? (はぁはぁ)」
案外、近くにいると言いたい。ここに筋トレ王子がいる。漢の中の漢がいる!
「いいえ、まだです」
なぬっ。俺に何が足りないんだ? こんなにスクワットをしているのに……。
種目か? 種目がお気に召さないのか? だったら!
俺は筋トレの種目を腕立てに変え、りえ達に向かって言った。
「りえさん……見つかるまで……俺と一緒に行動しないか? (はぁはぁ)」
「はい。そうさせていただきます」
よし。筋トレしててよかった。このままアピりを続けるぞ!
「で……どこに向かって……いるんだい? (はぁはぁ)」
「それはもちろん、寮だよ。もう直ぐ入寮式だし」
と、真壁。片高は寄宿制。入試のあったばかりの今日が入寮式。
「そっか……じゃあ……俺も行く! (はぁはぁ)」
「願ったりだよ! でもその前に、あっちをなんとかしたらどうだい?」
と、真壁は前方を指差して言った。そこにあったのは、知ってる顔だった。
知ってる顔。俺が見間違えるはずはない。
1人は美少女、俺のルームメイトになる人。今はすこぶる地味だ。
1人はイケメン、俺を公式ライバルと呼ぶ人。いつも全力でバカだ。
「千秋……すばる! (はぁはぁ)」
「じ、じじ、純様!」
「じゅんじゅん!」
千秋が俺の背中に飛び乗る。お、重い……。
だが、負荷をかけた腕立て、これは見せ場だ。
頑張るんだ、俺! メイド3人衆に存分にアピるんだ。
「おーっ、ほっほっほっ。純様、素晴らしいですわ!」
千秋の高笑いが俺の背中に響く。何故か華やかモードに変わったらしい。
その姿は見えないけれど……声だけでも充分に分かる。
千秋を背に乗せ腕立てをしている俺。そろそろ限界。
直ぐにでも辞めたい! 辞めて、華やかモードの千秋で目の保養をしたい。
でも辞められない、止められない。それどころかペースを速めている俺。
だって俺の正面で向かい合わせに腕立てをはじめたバカがいるから。
そのバカは侮れない。イケメンのくせして俺を公式ライバルと呼ぶ。
それでいて巨乳でバカ。俺のカノジョ候補にしてバカ。春川すばるだ!
「我が公式ライバルの……純くん……共に闘おうぞ! (はぁはぁ)」
すばるは鬱陶しいが学園の先輩。敬意を払う必要がある。バカだけど……。
カノジョ候補に突然闘いを挑まれた俺には戸惑いしかない。
いや、この勝負。俺が勝てば晴れて春川は俺のカノジョになるということか。
公式ライバルからカノジョへと華麗に転身するのだな!
みにくいアヒルの仔もびっくりだ!
しかも、ワイルドにメイド3人衆のハートも鷲掴みだ!
白鳥と大鷲の、文字通りの一石二鳥だ!
これは、負けるわけにはいかない! 絶対に負けられない勝負だ!
「お……おう……俺はもう12回も……腕立てしてるぜ! (はぁはぁ)」
その前はスクワットをしていた。どやっ!
俺のどや顔は、視線をゆれる巨乳に向けている!
「純くん……今は体力を温存すべき……本当の闘いはこの後! (はぁはぁ)」
なにぃ! 本当の闘いは腕立てではないのか。この後、何があるんだ?
ってゆうか、どうしてすばるはそれを知ってて腕立てしている?
あぁ、そうか。バカだからか。納得した。
けど、この後に何があるかは分からないままだ。
「どんな闘いを……するというんだ? (はぁはぁ)」
「純くん……本当に君は……何も知らないんだな? (はぁはぁ)」
知らない。俺は頷くしかできない。俺も相当なバカだ。
「デバイスの指示を……読んでいないんだね? (はぁはぁ)」
読んでない。深く頷いたあと、顔を上げるのも辛い。
腕のピキピキ感も辛い。
「バカ……なんだね? (はぁはぁ)」
ちげーよ。お前と一緒にすんじゃねーよ!
けどこの状況だと、否めない……。
「入寮式の……メインイベント……寮旗争奪戦だ! (はぁはぁ)」
何? 聞いたことない。俺は首の筋肉を酷使して真壁を見上げる。
真壁は俺を見下ろしては、深い溜息のあとで説明してくれた。
「はぁーっ。寮長を決める闘いのことだよ」
真壁は呆れた顔もイケメンだ。
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寮旗争奪戦! どんな闘いなんでしょうね
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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