秋、友達、虚構世界。

あいつとの勝負は面白くない。俺の全勝なのに何回も挑んでくる。

あー、めんどくせー…


「今日さ。俺んち来いよ!」

機嫌の良いあいつの声が響く。うるさい。

「勝負だよ。勝負!今度こそ俺が勝つんだからな!」

「いや、いい。寝る。」

夏が過ぎて、やっと涼しくなったんだ。惰眠が捗る。

「そんな事言うなよー!俺、せっかく準備したんだからさ!」

「うるせー。眠いんだよ。」

「行くって言うまで、ずっと騒ぐぞ!」

…マジかよ。俺の安眠ライフが…

「あー…行けばいいんだろ。行けば。」

「よっし!決まりな!じゃあコレ渡しとくわ!」

ん?折りたたまれたメモ?

「あっ。中はまだ見んなよ?俺んちに着いたら読んでくれ。」



あいつの家の前に到着した訳だが…何を準備したんだ?

とりあえず、渡されていたメモを読むか。


『逆脱出ゲーム!

俺んち、勝手に入って良いよ。家の物も好きに取って構わない。(後で返せよな。)

暗くなるまでに二階の俺の部屋に来れたらお前の勝ち。

俺の場所まで来れるかな?3190』


露骨な番号。何かで使うんだろうが、今はわからん。

さっさと中に入ろう。


玄関は普通に開いてたから入れたが…

床に、紙が落ちてるぞ。


『部屋は鍵がかかっている。

鍵はどこかにある。

青い鳥に聞け。』


青い鳥と言えば…SNSか?

…正解だ。無駄に意味深なのがある。


『焼き芋は美味いが落とし物に注意。』


焼き芋…キッチン?

確認してみるか…


キッチンには何もなさそうだな。こんな綺麗なのに散らかすのは悪い。

他に焼き芋と言えば…外?庭に向かおう。


これ見よがしの枯れ葉の山…これだな。

中に何かあんのか?どれ…

…お。


ダイヤルロックの木箱?

ああ。最初のメモの番号を入れれば。


…いや、やめだ。


俺、今あいつの思惑通りに動いてるだけだよな…

何か得意げな顔が浮かんできてムカつく。

うわ…素直に進めんのも嫌になってきた。

こうなったら……集中!!


目の前。物置小屋。中に…よし。

こいつをここに置いて。あいつは、ちょうど上に…いた。気づいてないな。

さて、さっさと終わらせよう。



「よう。」

「うおおぉうっ!え!?何で窓から?」

「家の物は好きに使っていいんだろ?梯子を使って登ってきた。」

「俺の用意した謎はどうしたんだよー!」

「放置。じゃあ今日も俺の勝ちだな。」

「ずっりーーーーー!!!次は負けねーーーーーー!!」


あいつとの勝負は面白くない。俺の全勝なのに何回も挑んでくる。


…次も付き合ってやるか。名も知らないネットの海の親友に。


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