きっかけ

今日はメイクもちゃんとしてたのに。もっと喋ればよかった。

頭にポツポツと後悔が浮かんでは消えていく。


悶々と考えつつ、学校に着くと、女子たちが教室でヘアアイロンを使って前髪を直していた。


「もうほんと雨やだー、髪ボサボサになる!」

「それなー、前髪死んだんだけど。」


大和がいた去年のクラスでも、友達が同じように話していた。窓には雨がザアザア打ちつけていて、教室もどこか薄暗い。

「水野は?雨最悪?」

と、唐突に大和が聞いてきた。

「ううん、雨の日好き。自分の部屋とかにいて雨降ってると落ち着く。」

「そっか、俺も好きなんだよね、なんか音とか」

そうやって笑ってくる大和がすごくキラキラしていて、自分と同じことを考えていたのも嬉しくて、思わず顔がほころんだ。


それから大和と話す時間は優香にとってむず痒くて楽しい時間だった。



懐かしい。その日優香はいつものお気に入りの傘を持ちながら薬局に行って、ネットで調べたリップとビューラーと、化粧下地を買って帰った。鏡の前でドキドキして初めての化粧したのはもう半年前だ。

もっと雨の日が好きになったのは大和のおかげなのだ。

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