第8話
達郎さんが、会社をやめてから2年の歳月が流れた。
この時アタシは、29歳になった。
今のアタシは、恋人を作って結婚したいと言う気持ちは薄れた。
アタシは、誰にも頼らずにコンカツをしていたが、途中でリタイアした。
お見合いパーティーに参加したり、合コンに行ったり、愛媛県の結婚支援センター主催のコンカツイベントにも足を運んだ…
けれど、失敗ばかりが続いた。
印刷会社の人からの紹介で、総務の27歳の男性とお見合いをしてお付き合いをしたけど、途中でやめた。
相手の男性がデート中にちらちらと腕時計を見ていたしぐさが目障りだった。
相手の男性がデート中にひっきりなしに腕時計をみていたので、アタシが『どうしたの?』と聞いた。
相手の男性は『おふくろが晩ごはんまでには帰ってきなさいと言われているのだよ…』とつらそうな声でアタシに答えた。
それを聞いたアタシは『はぐいたらしいわね!!マザコンサイテー野郎!!』と怒鳴りつけたあと、し烈なビンタを喰らわせた。
相手の男性は『ママ~』と言いながら泣き叫んだ。
アタシは、ビービー泣き叫んでいるマザコンサイテー野郎をするどい目つきでにらみつけた。
それからアタシは、紹介してもらう→付き合う→だが、幻滅する→怒鳴りつけて別れる…と言うパターンがつづいた。
どうして…
どうしてなのよ…
この時アタシは、結婚しない方が得だと想うようになった。
そして、達郎さんと別れてから2年目の春がやって来た。
アタシは、東門町のフジグランで大学時代の友人と再会したあと、ショッピングに行った。
友人が『夏物の新作を買いたい。』と言うたので、ショッピングモール内にあるブティックへ一緒に行った。
ショッピングの後、アタシは友人と一緒にマクドナルドに行って、照り焼きバーガーのセットを注文した。
注文の品を受け取った後、ふたりは、空いている席に座って、照り焼きバーガーを食べながら身の上話をした。
「ねえ、はるか。」
「なあに、まあちゃん。」
「あれからさ、どうなっちゃったの?」
「どうなったって?」
「ほら、あんたと付き合っていた30過ぎの背の高いタケヒコさんのことよ。」
「別れた!!」
アタシがそのように言うと、まあちゃん(友人)はおどろいた声で言うた。
「また別れたの?」
「だって、超むかつくマザコンサイテー野郎だから、一時間で別れた!!」
「また別れたの?」
「大の大人がママママママ…っていよんのがむかつくのよ!!だから、往復ビンタを喰らわせて別れた!!」
「困ったわね…はるかはなんで長続きしないのかなぁ?」
「恋が…長続きしない?」
「そうよ…あんたは、どう言うタイプがよくて、どう言うタイプはダメと言うのよ?」
「どう言うタイプがいいかと言うと…年収が500万以上で、自分の住む場所があって、自力で生活ができる男性と結婚する方がいいのよ…ダンナの実家で、ダンナの両親や兄弟姉妹(きょうだい)たちと同居する結婚生活は絶対イヤ!!…結婚しても親元で暮らすのは、自立できないサイテーのバカ男なのよ!!」
アタシの言葉を聞いたまあちゃんは、大きくため息をついてからアタシに言うた。
「分かったわ…あんたの場合は、ダンナの両親や兄弟姉妹(きょうだい)たちと同居すると言う結婚がイヤなのね…結婚しても親きょうだいと同居を続ける男はイソンショウだからどうしようもない大バカと言うのね…よくわかったわよ。」
「まあちゃん。」
まあちゃんは、アタシにこう言うた。
「今のはるかの性格では、男の人はみんないやがるわよ。」
「いやがる?」
「当たり前でしょ!!はるかの意固地な性格が原因で潤一さんや達郎さんを傷ついたのよ!!そのまた上に、あきのりくんも傷つけたと言うことに気がつきなさいよ!!」
まあちゃんから厳しい言葉を言われたアタシは、ひどく落ち込んだ。
フジグランでまあちゃんと別れたアタシは、夕方ごろ、織田ヶ浜の近くにあるわが家に帰った。
アタシは、元気がない声で『ただいま。』と言うた。
「お帰りなさい。あんた、元気がないわね…どうしたのよ一体。」
元気のないアタシに、母は『お茶を入れるわね。』と言うた。
ダイニングにて…
お茶を入れた母は、アタシがくるのを待っていた。
「はい、お茶よ。」
「ありがとう。」
母は、アタシが使っているパンダもようのマグカップ(楽天の景品だけどね…)に入っているお茶を差し出した。
母は『どうしたのよ。』とアタシにたずねた。
母からの問いに対して、アタシはこう答えた。
「かあさん。」
「何よ。」
「結婚って…なんのためにするものかな?」
「なんのためって、自分の幸せのためでしょ。」
「かあさんが言っている自分の幸せって…何なの?」
「はるか。」
「スイートホームを夢見て結婚したら、実際は違っていた…ダンナの両親や兄弟姉妹(きょうだい)たちやダンナの身内と同居なんて、アタシはイヤ!!…だから、結婚なんかイヤなのよ!!」
アタシの言葉に対して、母はこう言うた。
「分かったわ…はるかがそのように言うのであれば、結婚しない方がいいわよ…でもね、達郎さんのことはあんたに話しておくから…」
「やめて!!達郎さんの話なんか聞きたくないわよ!!」
「はるか、落ち着いて話だけでも聞いてよ…おじさんが、あんたと達郎さんの結婚を思いついた理由は、おカネのもめ事を解決するために思いついたのじゃないのよ。」
「おカネじゃなかったら、なんだと言いたいのよ!!」
「おじさんは、厚意(こうい)であんたと達郎さんのお見合いのお世話をしたのよ…おじさんは困っている人を見ると、ほっとけないから厚意で人助けをしたのよ…」
「そんなのウソよ!!アタシは信じない!!」
アタシの言葉に対して、母はふてくされた声で本当のことを話した。
「はるかの言うとおり…はるかと達郎さんのお見合いは、金銭的なトラブルを解決するためのお見合いだったのよ…達郎さんのお兄さん夫婦の結婚問題に加えて、達郎さんのお父様が、葬儀の受付をしていた時に、お腹を壊してトイレに行っている間に香典をなくした…達郎さんのお父さまは、先方様から300万円を弁償しなさいと言われたので、金策に困っていた…300万円は、おじさんが用立てたあと、先方さんとジダン交渉したことで、問題を解決することができた…おじさんがいなかったら達郎さんのお父さんは助からなかった…達郎さんの家はおじさんから金銭的な面で助けていただいたので、恩返しをしなければならなかった。」
「だから、達郎さんはなにもかもガマンしたと言うの?」
「それもあるけれど…達郎さんが結婚適齢期になっていた頃は、はるかはまだ中学生だったのよ!!」
「それで、達郎さんを待たせたのね?」
「おじさんは、達郎さんにすまないことをしたと今でも思っているわ…おじさん、去年の暮れに…倒れたのよ!!」
「おじさんが…倒れた?」
「会議中にくも膜下出血を起こして倒れたのよ!!…もう、長く生きられないと思う…あんたね!!おじさんに悪いことをしたと思っているのであれば、きちんと心の底からおじさんにあやまりなさい!!」
「かあさん。」
「はるかのシューカツがうまく行かない時に、ハラプレックス(印刷会社)に入社出来たのも、おじさんがハラプレックスの人に必死になって頼んだのよ!!はるかはそのことが全く分かっていないわね!!」
母から厳しい口調で言われたアタシは、ひどく落ち込んだ。
アタシは、達郎さんが今どこでどんな暮らしをしているのかを母にたずねた。
「かあさん…達郎さんは今、どこにいるの?」
アタシの問いに対して、母は達郎さんは冷熱会社をやめたあと、家出をして行方不明になったと答えた。
達郎さんは、会社をやめて家出をしたあと貯金を取り崩して、家出中の生活を維持していた。
しかし、それに限界が来たのでケーサツのお世話になった。
達郎さんは、冷熱会社には復帰しないと言い張った。
その後、達郎さんは松山にいる母の知り合いのコネで勝岡町の運転免許センターの近くにある障害者の就労会社に再就職して、伊予市のスーパーストアの清掃の仕事をしていることを聞いた。
アタシは、次の休みの日に達郎さんのいる伊予市へ行くことにした。
5月の第2土曜日に、アタシは拝志(はいし)のバス停から小松の総合支所(西条市)までバスに乗った。
小松の総合支所でバスを降りた後、松山行きの特急バスに乗りかえて、桜三里(とうげ)を越えて、松山市駅まで行った。
松山市駅で特急バスを降りたアタシは、伊予鉄郡中線の電車に乗って郡中駅まで行った。
郡中(ぐんちゅう)駅で電車を降りたアタシは、踏み切りを2つ越えて、達郎さんが清掃の仕事をしているフジ(スーパーストア)へ行った。
アタシの服装は、上は黒のタンクトップの上から白のブラウスをはおって、下はネイビーのレギンスをはいて、白のトートバッグを持って、白いシューズをはいていた。
達郎さんが清掃の仕事をしているスーパーストアについた。
アタシは案内の人に、達郎さんはいますかとたずねた。
案内の人は『達郎さんは、数日前にやめたよ。』と答えた。
それを聞いたアタシは、びっくりした。
やめたって…
どうしてなの…
案内の人は、生ぬるい声でアタシに言うた。
「やめた理由は分からないけど、ソートーつらそうな顔をしていたわよ。」
「やっぱり…」
「しかし、もったいないことをしたわねぇ…ビーマック(冷熱会社)やめたからなにもかもパーになったのよ…ビーマックにいたら終身雇用で、固定給で、老後の年金は安定して…人生バラ色だったのに…」
「それで、達郎さんは今どうしていますか?」
「おじょうちゃん、そんなに知りたいのであれば、五色姫(海浜公園)へ行ったらぁ…」
「五色姫…」
「達郎さんは、キャバの女のヒモになったのよ…おじょうちゃん、やっぱり会わない方がいいわよ…ショック受けるわよ。」
ところ変わって、五色姫海浜公園にて…
アタシは、遠くから達郎さんをながめた。
達郎さんは、キャバの女3人とイチャイチャしていた。
今の達郎さんは、伊予鉄郡中駅のすぐ近くにあるロフト式のマンションでキャバの女3人とドーセーしていた。
達郎さんは、キャバの女3人のヒモになった…
ビーマックをやめたことも、実家の家族にメーワクかけたこともおかまいなしになっていた…
サイテー…
サイテーね…
アタシは、松山市駅行きのいよてつ電車の中でグスングスンと泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます