第6話

次の日の昼休みのことであった。


ところ変わって、東村の旧国道沿いにある大型ショッピングセンターにて…


ショッピングセンター内にあるオムライス屋さんで、アタシはあきのりと会った。


挙式披露宴がどちらもお流れになったので、あきのりにどうわびればいいのか分からずに困っていた。


アタシとあきのりは、ランチを摂ったあと食後のコーヒーをのんでいた。


その時、あきのりが強い怒りを込めながらアタシに言うた。


「お前さ。」

「何よ?」

「相手の気持ちを考えたことあるのか!?」

「相手の気持ち?」

「そうだよ!!」

「怒っているの?」

「当たり前だ!!」


あきのりは、アタシにこう言うた。


「お前は、オレの気持ちを考えたことがあるのか!?」

「あきのりの気持ち?」

「ふざけんなよ!!」


あきのりは、アタシに理由を言うた。


「高校最後の夏休みのことを忘れたのかよ!?あのとき、織田ヶ浜で花火をしながら『同じ大学へ行こうね…』と言うた…けれど…オレは受験に失敗して…お前だけは大学へ行った。」


あきのりは、コーヒーをひとのみしてからアタシに言うた。


「オレは、一年浪人した…合格したあと、お前を追いかけて今治を出た…久しぶりに会ったら…お前はオレに『好きな人ができた…』と言ったよな…お前が暮らしていたアパートの部屋で…シャワーの音がした…あれはどう言うことだ!?」

「あの時は…潤一さんが雨に濡れていてかわいそうだったから…」

「ふざけんなよボケ!!オレは、それで大学をやめた…その時に、オヤジが会社の金を使い込んで逃げた…オヤジの使い込みのせいで、オレの人生はわやになった!!」

「あきのり。」


あきのりは、アタシにより激しい怒りをぶつけた。


「お前は、そのまま大学を卒業して、こっちにもんて(かえって)来た…ほいて(それで)、お前と潤一さんと結婚することが決まった。その時に、潤一さんがオレの前で土下座して、どう言うたと思う?」


あきのりは、より激しい怒りを込めてアタシに言うた。


「潤一さん、泣きながらオレにこう言うた…『単身赴任の父親がJR(福知山線)の大事故で亡くなった…母親も、中学に上がる前に亡くなった…児童施設で暮らしていたいた…きついいじめに遭ったので、学校を休みがちになった…親しい友人知人はいなかった…女はみーんなオレに冷たい…はるかだけはオレにやさしく接した…だから…はるかがいないとオレは生きて行けない…』そう言うてメソメソメソメソ泣いた…メソメソメソメソメソメソ泣いて、あわれみを乞うだけ乞うた…オレは潤一のクソ野郎の言葉をしっかりと覚えている!!」

「あきのり。」

「ほやけん(だから)オレは、お前のために身を引いた!!ほいて(そして)オレは、違うカノジョと結婚した!!」

「そうだったの?」

「お前、今頃になって気がついたのかよ!!」

「知らなかったわ。」

「ふざけんなよ!!オレはお前のダブルブッキングのせいで、なにもかもがわやになった…オレ、近いうちに妻とリコンすることにした!!…それだけは言うておくから!!」


あきのりは、タンブラーに入っているミネラルウォーターをゴクゴクとのみほしてから、アタシに言うた。


「ここの代金!!お前が払え!!」


あきのりは、アタシに伝票をたたきつけたあと店から出て行った。


あきのりが言うた言葉には、すごく重みがあった。


だから、午後の仕事が思うようにはかどらなかった。


あきのりが、アタシのことを愛していたなんて…


知らなかった…


アタシが大学にいた時、帰り道に雨に濡れて震えている潤一さんを助けたことがきっかけで…


アタシと潤一さんの恋が始まった…


アタシが、潤一さんばかりを愛したために…


あきのりや達郎さんの気持ちを逆なでにした…


あーん、仕事に手がつかないじゃないよぉ…


アタシは、すっとんきょうな声をあげた。


「どしたんで(どうしたの)?」


課長がアタシに声をかけた。


アタシは『トイレ』と言うたあと、席を外してトイレへ行った。


その頃、乃万(のま)にある冷熱会社で働いている達郎さんはどうしていたのか?


達郎さんは、あの一件が原因で通町の賃貸マンションに戻った。


達郎さんは、再び今治バスセンターから延喜のバス停までバスに乗って、バス停から歩いて職場に向かう日々に戻った。


アタシのダブルブッキングが原因で、達郎さんは調子を崩した。


この時、達郎さんのいる職場では毎年8月の今治の夏祭り『おんまく』で踊りに参加する従業員さんたちが踊りの練習をしていた頃あった。


例年なら、達郎さんは積極的に踊りに参加をする予定であった。


しかし、あの一件が原因で『おんまくの踊りなんか拒否する!!』と言うて、踊りの連に参加することをやめた。


夕方5時過ぎのことであった。


達郎さんは、仕事が終わったあとタイムカードに退勤時刻を記録して、会社を出ようとした。


その時に、達郎さんはアタシのおじに呼びとめられた。


「熊代くん。」

「専務。」

「どうしたのだね一体…いつもなら、『おんまく』の踊りに参加していたのに…今年は参加をしないのかね?」

「今年…いいえ、今年から永久に参加しません…」

「わけを話してくれないかな?」

「あるわけないでしょ…帰ります…」


達郎さんは、フキゲンな表情で職場から出た。


達郎さんは、あの一件が原因でなにもかもが変わった。


アタシのおじが、達郎さんの健康のためにと思って注文したお弁当の注文をやめた。


その後、達郎さんはコンビニで買った激辛の食べ物でランチを摂るようになった。


それと同時に、仕事もうまく行かなくなった。


達郎さんは、この最近上の人から『この頃、売上げ成績が落ちているぞ!!』と言われたので、ひどく落ち込んでいた。


「熊代くん、どうしたのだね君は…この最近、営業一課の売上げ成績が目標の数値の過半数にも行っていないようだな…」

「すみませんでした。」

「もっとスタッフ一同がしっかりしないと困るのだよ…」

「ですから、営業一課全員の力を結集して…」

「君のいいわけは聞きあきた!!もういい!!」


部長さんは、命令と指示を繰り返す口調で達郎さんに言い続けた。


営業一課のオフィスにて…


「この報告書、間違い字だらけだぞ!!わからない字は、辞書を引くなりして調べろ!!もう一度始めから書き直せ!!」

「すみませんでした。」


達郎さんは、部下のミスをより激しい力を込めておらぶ(どなる)ようになった。


スタッフさんたちは、達郎さんを恐れた。


「ねえ、山脇さんどうしたの?」

「報告書を作り直せと言われたそうよ。」


OLさんたちは、ヒソヒソと話していた。


「コラ!!そこ!!仕事しろ仕事を!!」


スタッフさんたちは、達郎さんを白い目でにらみつけた。


職場の雰囲気がどす黒く淀んでいた。


お昼休みのことであった。


ところ変わって、社員食堂にて…


達郎さんは、かけそば一杯を注文してランチを摂っていた。


そんな時であった。


社内恋愛のカップルさん4組が達郎さんの座っている席の近くの席に座っていた。


カップルさんたちは、ランチに摂りながら挙式披露宴のことを話したり、週末に行くデートのお話などをしていた。


達郎さんは、ため息をついた。


この時、達郎さんは自分自身がなまけていたから結婚相手と出会う機会を逃したことに気がついた。


そう思った達郎さんは、自分の力でお嫁さんを探そうと決意した。


アタシも、あの一件が原因で仕事も私生活も、うまく行かない日々が続いた。


アタシは、例の一件から2ヶ月後に再びおじの勧めでお見合いを7~8回した。


けれど、お見合い相手の人の性格が極力悪いことを理由に全部けつった(けった)。


『優柔不断』『仕事の話ばかりする』『マザコン男』など…


『アタシは悪くない、お見合い相手が全部悪い…』と言うアタシにも悪い部分があった。


例えば、一緒にごはんを食べに行った時に、相手の人が食べたい物を決めることができずに困っているのに、アタシが『それだったら、日替わり定食にしましょうか?』と言うて先走る…


気に入らなければすぐにイラついて相手の人に暴言をはいてしまうなど…


アタシが意固地で頭がかたい性格だからいいお相手に出会えない…


100回近くに渡ってお見合いをしたけど、実際に相手に会ったのは7~8回だけ…


あとはぜーんぶ写真と釣り書を見ただけですぐけつる…


そんなことばかりを続けていたので、アタシはダメになった。


達郎さんも、松山市や県外の結婚相談の店に行くなどして結婚相手を探した。


達郎さんは、足が棒になるまで結婚相談の店を回ったのに、全くいい結果が出ない…


その他にも、深刻な問題があった。


その中で、達郎さんの実家の人間関係の問題が深刻になっていた。


実家の家族の協力が得られない中では、コンカツをして行くことは無理ではないか…


そう思った達郎さんは、リタイアする一歩手前に追い詰められた。


達郎さんは、最初のうちは『がんばって自分の嫁さんを探すのだ。』と意気込んでいた。


けれど、時の経過とともに自暴自棄におちいった。


それを聞いたアタシのおじは、達郎さんの実家に行って、実家の家族に対して『達郎さんの結婚問題から逃げないで欲しい。』と言うた。


そしたら、達郎さんの実家の家族が口をとがらせてアタシのおじに非難口調で言うた。


「よくもアタシたち家族にいいがかりをつけたわね!!」


アタシのおじは、達郎さんの家族たちに協力するように言うた。


しかし、達郎さんの実家の家族たちがおじにボロクソ言いまくったので、もうだめだと言うてさじを投げた。


これによって、達郎さんは『コンカツヤーメタ…』と言うてさじを投げた。

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