6
しばらく、思い悩み、店の利用を控えていた美由は二か月ぶりに店に予約を入れた。
今日は美由の家にレイが来る方式だ。
「笠間さん、レディートゥースのレイです」
ドアを開けるといつもの格好のレイがいた。
「お久しぶりです」
とレイは耳元で囁いた。
美由はレイを抱きしめていた。
「会いたかった。でも、我慢しちゃった……」
レイは子どもにするかのように美由の背中を優しく撫でた。
「レイさん、私、我慢できな。して」
美由は玄関だというのに、レイに抱き着き、身体をまさぐった。
「み、美由さん、ここ玄関! それにシャワーも」
「良いの。貴女に今すぐ抱かれたい……」
レイは美由の快楽に溶けた瞳を見て、受け入れた。
玄関に鍵をかけ、ゆっくりと美由を押し倒し、美由が求めるまま首筋にキスをし、服を脱がしていく。
店の規定として良いのかNGなのかレイにも判断がつかなくなっていた。
「すみません。貴女を気持よくさせるのが私の仕事なのに、私まで気持よくなってきてしまいました……」
「一緒に気持よくなろう?」
玄関という場所で小声で会話をするが、二人はその背徳感という媚薬でお互いに酔っていた。
冷たかった床が二人の体温であたたかくなっていく。
お互いキスだけで繰り広げるセックスは二人だけの世界を形作り、それだけで満足だった。
声を出さないよう、音を立てないよう、静かに燃える炎のように広げられる快楽の扉は美由の心をこじ開ける。
「レイさん、ダメ、声出そう」
レイは美由の頭を自分の左肩に寄せた。
美由はレイの肩にしがみつくように噛みついた。
美由の飛翔が近づくに連れて、噛む力が強くなる。
レイの息も上がってくる。
服越しのセックスに焦らせながらも興奮した。
レイの包まれる美由はいつもより小さく見えた。
◇
レイは服を着ていたから大事にはならなかったが、それでも歯形が薄っすら付いた。
「レイさんごめんなさい」
「いえ、そんなに気持よかったのかなって痛みより嬉しい方が強かったです」
レイは美由を恋人にするかのように強く抱きしめた。
「すみません。余韻を感じさせてください」
「……うん」
レイの匂いは香水とレイ自身の匂いと混ざる普段ぬいぐるみを嗅いでいるのとはやはり違う。
本物のレイを肌で感じている気がして美由は余計に嬉しかった。
◇
「お店では禁止されてるのにまいったな……。恋したかも」
レイは帰り道で呟いた。
受け取った金をこれ程、憎いとは思ったことはなかった。
何人もの女性と身体を重ねてきたが、リピートで何度も身体を重ねたの美由が初めてだった。
美由がレイに抱く気持は薄々とだからレイも肌で感じていた。
レイ自身が惹かれていた。
求められたくて仕事を始めたのに、今は自分が求めたい。
相手が美由と聞かされて今日はどれほど嬉しかったか。
「美由さん……」
自分と美由を繋ぐのが金という絆なのが近くて遠かった。
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