9.ファイヤとアクア
「すべて燃えろ!! ヘルズファイヤー!!!!」
ファイヤはその大きな口を開けると真っ赤に燃える炎を吐き出した。
「ライトシールド・二連!!」
ハルトは自分の前にシールドを張り火炎を防ぐ。高温の炎がシールドを包む。
パリパリパリッ!
熱さによってヒビが入るシールド。
炎をかわしたクレアとルルが左右に飛ぶ。ルルはすぐに弓を構えてファイヤに狙いを定める。
「はっ!!」
シュン!!
ファイヤは自分めがけて放たれた矢を軽くかわす。そして自分に矢を放ったルルを睨みつけ、手の平を上に向けて力を込める。
「クアッ!!」
気合を入れて手に真っ赤な火球を発生させる。間入れずその火球をルルにめがけて投げつけた。
ガン!!
「きゃあ!!」
持っていた弓で辛うじて火球を弾くルルだが、その勢いでその場に倒れ込んでしまう。
それを見たクレアが両手で剣を持ち一直線にファイヤに向けて走り込む。
「はあああああ!!!」
ガン!!
「えっ!?」
ファイヤは渾身の一撃で打ち込んできたクレアの攻撃を、自身の腕に付けた小型の盾で防いだ。
「おらっ!!!」
ドン!!
「きゃああ!!!」
ファイヤは攻撃を防がれ隙のできたクレアを、自慢の太い尻尾で殴り飛ばした。
「ぐぐっ……」
腹に直撃を受けたクレアが後退して座り込む。
「クレア!!」
すぐにルルが近寄り回復魔法をかける。
「大丈夫か、二人とも!!」
クレアとルルの傍によるハルト。
「ええ、何とか。でもあいつ、普通に強いわ」
「確かに。無策で突っ込んでも勝てないな。二人ともちょっといいか?」
ハルトはクレアとルルに小声で何かを呟く。それを見たファイヤが大声で叫ぶ。
「何をしている!! 戦闘中だぞ!! かかって来い!!!」
ファイヤは腰に付けたもう一本の剣を抜き二刀流で走り込んでくる。
「ルル、頼む!!」
「うん!」
ルルはそう言うと何かを唱える。少しだけ白く光るハルト。クレアは斜め横に向けて大きく走り出す。
「ヘルズファイヤー!!!!」
ファイヤは再び業火をその口から吐き出す。
「ライトシールド!!」
ハルトは正面にシールドを出しその炎を防御。
斜め横に走っていたクレアがファイヤの右側面へ、そして同じく横に移動していたルルが左側面に走り渾身の矢を射る。
「はあああああ!!!」
「はっ!!」
ガン、ガン!!!
左右からの同時攻撃を手にした二本の剣で防ぐファイヤ。
バリン!!
そして高熱で再度割れるハルトのシールド。
ところが今度は割れた盾を突っ切り、ハルトは全力でファイヤに向かって走り込む。
「特攻だと!? 馬鹿め! ヘルズファイヤー!!!!」
真正面から斬りかかるハルトに大きな口から放たれた業火が再び襲う。
「ライトシールド!!」
ハルトは三度シールドを張る。
「そんな軟な盾、俺様の業火で焼き尽くして……、何っ!?」
ハルトが出した盾はファイヤに対して水平に出現させたものではなく、斜めに傾いて現れていた。
「はああ!!!」
トン!!
「な、何っ!?」
ハルトはその斜めの盾を足場にして大きく空に舞い上がった。そして唯一隙のあった背後に素早く斬り込みながら降りる。そのすべての動きがそれまでとは全く別人のごとく速い。
ルルが掛けた敏捷上昇魔法がハルトに高速の動きを与えていた。
「はああああああ!!!!」
ズンッ!!!
「グワッアアアッ!!!」
背中を袈裟懸けのように上から斬るハルト。ううっと声を出してファイアが片膝をつく。殺すつもりはないハルト達は再び後退して叫んだ。
「ファイヤ!! もういいだろう!! 俺達は話がしたいんだ!!!」
ファイヤは背中に手をやり溢れ出る血を見ながら言う。
「雑魚共が!! 本気で俺様を怒らせたな!!!」
「待て! だから俺達は話を……」
「へ、ヘルズファイヤー!!!!」
「何で分からねえんだよ!!!」
ハルトはシールドで炎を防ぎ、再びファイヤに斬りかかる。背中に大怪我を負ったファイヤに先ほどまでの力と技にキレがない。対照的に動きが速いハルト。
「くそっ!!! これで目を覚ませ!!!」
ハルトが再びファイヤに斬りかかろうとしたその瞬間、周りに集まる冷気を感じた。
「アイスウォール!!!」
ジュン!!!
「なに!?」
ハルトが斬り込んだ先に、突如冷たい水の壁が出現してその剣を防いだ。
「ア、アクア……」
アクアと呼ばれたその青く長い髪をした女性は、背中から血を流してうずくまるファイヤを見て言った。
「助けに来たわ、ファイヤ。もう大丈夫」
アクアはそう言うと手をファイヤの背中にあて何やら魔法を詠唱した。
「た、助かる。アクア……」
みるみる回復するファイヤの傷。傷の回復を終えるとアクアはハルト達に向かって言った。
「三人がかりでひとりを攻撃するとは笑止、笑止だわ。プライドも何もないのかしら、あなた達」
口調は穏やかだが明らかにハルト達に対して強い怒りを感じる。
「俺達は話し合いに来た。まず話をしたいんだ、でも攻撃されて……」
ハルトはアクアに一生懸命説明しようとしたが、アクアは周りに倒れる小さな火トカゲやファイヤの背中の傷を見て言い返した。
「この有様を見て誰が話し合いをしたいという言葉を信じる? 【原色の悪魔】水の妖精と呼ばれるこの私の浄化の水で、あなた達のその汚れた存在を消してあげるわあ」
「アクア、俺も一緒に戦う」
ファイヤの前に立つアクアの肩に手を乗せ、傷が回復したファイヤが彼女の横に立つ。
「ええ、ありがとう」
「だから、待てって!!!」
そんなハルトの叫び声も無視してアクアは両手を天に向けて挙げる。晴天だった頭上に突如現れる真っ黒な厚い雲。
「大気の水よ、浄化の水よ、今ここに集まりてすべてを消さん!!
アクアがそう叫ぶと分厚い雲の中から真っ黒な雨が降り出した。
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