行水しながら烏を撃つ女

なんて醜悪な生き物だろう。

うす茶色で、ぶよぶよして、か細い声でしのび音をもらす、あんな不器用な生き物が烏と呼ばれる鳥だなんて。

でもそれでも。

私はこんな奴らのために死んでやりたかった。

それだけは、本当に本当に心から思っている。

そう、私は思っていた。ただ、そう思っていた。でもね。

思ってるだけでは、だめなんだ。

猟銃をとって、烏を撃つ。

鳥は無言で死ぬ。

けれど、烏は違う。

「ほら、こんなふうに撃っても、びくともしないでしょう。あなたたちは」

私はみんなに見せてあげる。

私が撃った弾丸は、烏のからだを突き抜け、黒い血を散らしながら、後ろの木に当たって落ちた。

「どうした?」

みんなの顔つきが変わる。

「おい、こいつ、おかしいぞ!」

「撃たれたんだ! こいつにやられたんだよ!」

「いやああああっ!!」

私のまわりには烏の死体と、私だけが残った。烏たちは去ってしまった。それぞれに最後の言葉を残して。

私は体を拭いて、服を着て、また歩く。行くあてもなく。

私が撃つことで、烏が黒い血にまみれて人間に変わるなら、私はたえまなく体を洗っていなければならない。

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