行水しながら烏を撃つ女
なんて醜悪な生き物だろう。
うす茶色で、ぶよぶよして、か細い声でしのび音をもらす、あんな不器用な生き物が烏と呼ばれる鳥だなんて。
でもそれでも。
私はこんな奴らのために死んでやりたかった。
それだけは、本当に本当に心から思っている。
そう、私は思っていた。ただ、そう思っていた。でもね。
思ってるだけでは、だめなんだ。
猟銃をとって、烏を撃つ。
鳥は無言で死ぬ。
けれど、烏は違う。
「ほら、こんなふうに撃っても、びくともしないでしょう。あなたたちは」
私はみんなに見せてあげる。
私が撃った弾丸は、烏のからだを突き抜け、黒い血を散らしながら、後ろの木に当たって落ちた。
「どうした?」
みんなの顔つきが変わる。
「おい、こいつ、おかしいぞ!」
「撃たれたんだ! こいつにやられたんだよ!」
「いやああああっ!!」
私のまわりには烏の死体と、私だけが残った。烏たちは去ってしまった。それぞれに最後の言葉を残して。
私は体を拭いて、服を着て、また歩く。行くあてもなく。
私が撃つことで、烏が黒い血にまみれて人間に変わるなら、私はたえまなく体を洗っていなければならない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます