誕生日
生きていることにすら馴染めないのに、自分が死んで消えて無くなるという事実と折り合いがつくはずがない。
なぜなら、僕の魂は、この世界の核心に触れると消えてしまうのだから、人間という生き物はこうやって簡単に消えてしまうのだ。
僕は僕を殺す。
僕の命が消える瞬間を見届けるのだ。
「僕が僕を殺す。死んだら、もう一度死ぬ」
僕を、この世界から完全に消滅させるために。
それまでは、僕は、僕のために生きたい。
そう決めた。
僕は僕を鍛えるために、未来の僕と対話した。
「僕に力を貸してくれるか」
「わかった」
「僕より強い君を、僕は信じないよ」
「ありがとう」
僕は、僕の生まれ変わりを殺しに戻った。
過去の僕が未来の僕を、それとも、未来の僕が過去の僕を――。
その日は僕が死んだ後のように寒かった。
僕は気が付かなくてよかったね。
僕は大事なことを忘れていたよ。
魂は僕自身の持ち物ではなかったんだ。
いつもは自分を偽って生きている人間だって、人間を殺すために生きていると勘違いをした人間だって、誰かが僕の中を通りすぎ、その者の魂がこの世界に来るんだよ。
そうやって僕の魂は、今まで見えていたことを見ないように隠して生きるしかない。
でももう、どうやっても見えないよ。
魂の前の肉体はひどく濁っている。
その肉体が人目に付くんだ。
人は誰かに見せないと気付かれないからね。
だったらもう……
僕が僕を。
僕が、見ている。
生きていてくれよ、こんな僕で悪かったね。
こんな僕で……
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