妹屋

そして、今回は、その中でも特に人気の――。

「なんと、これは――素晴らしい!」

思わず、息を呑む。そう、例の如きデザインの――。

「これがあれば、私は幸せになれると思いますよ?」

この台詞は、かなり前の事件の後、今から三年後に聞いたセリフのように記憶に残っている。どうやら僕もこの言葉を聞いた時には、少し、嬉しくなり、自然と笑みがこぼれていた。これが――これが、妹製造の秘密なのだ!

「これで、もし君が『お兄ちゃん』だったら、嬉しいのかな? なんて」

「……いや、そんな事はない。もちろん、この言葉の意味も判ってる。何より、その言葉は、君自身の秘密が………」

「……本当にそう思う? 僕はね、君の事は、自分でも知らないけど。でもね――」

「………」

「『お兄ちゃん』の事も、僕は自分の気持ちでは無いって思ってるよ。だからもし――」

どうしようかな。いや、考えよう。この秘密、これには、何の秘密も有りはしない。そう、誰にも明かさない秘密、だ。

「あのね――僕の秘密は何だよ? それが聞きたい?」

「君は『妹屋の工業デザイナーだった』。その肩書きは、もちろん、君自身の秘密だよ?」

「………。」

「いや、君がそう言っても、僕が本当のことを言っても、何も変わりはないんだけど」

「………。」

「じゃあさ――答を聞かせて欲しいな。僕はね、実は、僕だけは――」

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