残像の楔

新しい朝が来た。

「お前の夢、なんて言うのだ? 」

「それは俺と共に行こうって言ってくれてるんだから、知ってるだろ、俺の事」

「……知らん、そのことなら、もう忘れた」

これで終わるのだから、いつもこうだ。俺は、あいつに夢なんて言ってしまったら、俺はその言葉に縛られるのだ。いつまでも、昔の様に、ずっと。

(そうだ、もうすぐだ。なんだ、それだけなのか、と考えても、何もなかったわけだ。)

砂場では、大きな箱が地面に直接刺さっていた。大きな箱はとても薄くて、中身が透けて見えた。中で何かしている気もして、俺は上の方から慎重に手を伸ばして、箱の箱の気配まわりをそっとすくって、箱から一段上にあがった。

箱をしまうと、目の前の太陽がそっと笑った。俺の腕から離れた太陽は、砂を吐き出すようにして消えてしまった。手の温度は戻るが、手を返すと砂が出てくる、さらさらさ――、なんて言ったことがあった。手の中を撫でると、砂が消えてしまった。

砂が消える、何もなくなる。

どうせ、俺は戻ってくる。

砂を吐き出して、俺は砂場から飛び降りた。家に帰る途中で、空き缶を拾って、箱の中に入れたのを思い出す。

あいつは、これから帰ってくる。

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