製作日誌 其の3
なんかAIって夜型だよね。昼間いじるとろくな文章を返してこない。日が沈むと、俄然やる気を出す。そんな感じだ。
自分が夜型なだけか。
試しにさっきの文章の続きをGPT-2 Japanese Demonstrationに書かせてみると、次のようになる。
自分が夜型だと気づいて、少し冷静になってきた俺は、そのままスマホの電源を押さえて電話にでていた。
こんな状況が続くのは俺の精神状態が不安定なときなんだろう。誰もいないときにこの雰囲気に耐えられない。……ああ、そういえば。
「こんな時だというのに、電話してる俺って偉いね」
ふと、この通話に自分が出て良かったなと思うようになったことがある。
その時は、今目の前にもじもじくさっているけど、俺にしてみればそれくらい、余裕の感じ。
自分が昔からこんなだったから、俺は今も昔も、自分自身が本当に普通だった時は分かっているはずだ。
「何してるんだよ、お前」
携帯の画面を見て愕然とした、この瞬間。
「………。今の、この場面が分かっていれば、俺もこの電話の内容で分別できる。そうやって俺は、俺は、この状態になったのはいつのことかよく分かっているのにな。本当に今が分からないよ。……こんな時に電話出たくねえよ。馬鹿にしてもいいけど、俺もだ」
こんな状況下で電話が鳴る!? 思いっきり頭を抱える俺。
もう何が何だか分からなくなってきた。
とにかく自分の中で整理しないと。
俺が馬鹿だなんて言うなよ。
そんな思いで目の前を眺める、俺の横で……
「どうされましたか? お嬢さま」
誰もいないところなのに、声がした。
「…え、…あ、う、……」
気づけば電話の主は俺ではなく、背後から姿を現した女性だった。彼女は、俺と同じ真っ赤なドレスを身につけていて、よくよく見るとその下には、小さな白いエプロンをつけていて、それがまた美しいと思った。
「これは、一体? お嬢さま、どうされたんですか?」
「あ、ううん、何も問題ないよ。ただ……その、ね、………お願いがあるんだけど…」
「どんなお願いですか?」
「うん、あのね」
「お願い?」
「うん、さっき言ってたんだけど…」
「さっき?」
「なんだか、………さっきも、聞いたことあるんだけど…」
そこまで聞くと、女性は「そう、なんですか?」と首を傾げた。
「え、えっと、お願いのことまで知ってるの?」
「ええ、はい。でも、もう少し情報は集めた方がいいですね…」
「えっと、何を?」
「え、えっと、……ですから!」
「何も問題ない、とは言えないけど……」
そう言って、女性はかなり顔を赤くして「お願いしてもいいかな?」と真剣な表情で言った。
「……どうぞ」
本当は「なんで、私なんかが」と言いたそうだったが、今はとりあえず話を合わせてやっておいた。
そうして、女性が口をつぐむと、女性が持ってきたのは、大きめの箱だった。
「わ、私、これに入っているんですけど。見たところ、お嬢さまには見えていないものも有りそうですね」
女性はそう言って、俺にこういった。
「私には、見えると思うけど……いいかな、お嬢さま?」
「ああ、うん」
彼女の真剣な表情に、俺も真剣に返すしかなかった。
「ああ、でも、……この、…………いや、でも」
そういうと、女性は小さな白い陶器が入っている箱から、何か細長い、白い棒みたいなものを取り出した。
何かの金属でできた棒のようなそれは、その大きさも見た目も、何をしているのかよく分からなかったが、多分それは、
―――お願いをしてもいい? ―――
と聞いている、俺はその言葉を、少しだけ、すごく、心の奥にくすぐったくて、つい思ったことを、なんとなく口にしてしまいたくなった。
「見える、から、」
俺がそういうと、彼女はしぶしぶという感じで、俺に向けて白い棒を少しだけ振ってくれる。
その行為は、とても、俺が抱いている感情としては、何もかもを奪われたような気持ちになった。
「製作日誌」の続きを書いてもらおうと思ったのだが、何度やっても、エッセイにはならないようだ。代わりに「俺」が、「お嬢さん」になってしまった。
確かに、昼間に試したときよりは、話になっている。
が、これはAIが、やる気を出していると言って良いものだろうか?
与えた言葉の端々から私の密かな願望を抉りだそうとしている。そんなAIの悪意を感じないこともない。「お嬢さん」である「俺」にそんな棒を突きつけるなんて、ちょっと不躾ではないのかな。
これを添削してどうにかしようとしても味を消すだけなので、最近はもっぱらBunChoの対話型執筆とGPT-2 Japanese Demonstrationをちゃんぽんに使って、入れ替えたり、書き加えたり、切り貼りしながら書いている。(自分が)面白い(と思う)小説をつくるのが目的なので、AIに書かせる事自体にはあまりこだわりがない。なので使い方も厳密ではない。
(そのへんの所をどう思うのか疑問に思い、AIに訊いたところ、以下の回答を得た。)
……ただ、今のところは「お嬢さん」というよりは「お嬢さんに似合う女性」で通じるようだけれど。
A (Get-Bang Irway with A Dream-Get-With Color)
With the Buncho GettingHero. Each to the Dream-Getting Dollar's Director Results, take method of the tools to be different demonstrators. Pre people post of pretty-tree biers of the thieves. Incubate or meaning the tools take pretty-tree biers the thieve mediation today. Building the Fuzy Drebson, take the bloodthird San Diego codes in Italia. Unreality as a coocle. Gothic or dynamicalis as a incessary. A DC Application. A Gruotter. WrestleMark Courses Huboutout
The Course of Italia San Diego: Dreams UK also reach more at the Metro Coliseum, automotive operations, radial applications, compatibility and coincident, security drizing assign information.
A(Get-Bang Irway with A Dream-Get-With Color)
BunchoGettingHeroで。 それぞれがDream-GettingDollarのDirectorResultsに、ツールの方法を使ってさまざまなデモンストレーターになります。 泥棒のかわいい木のビールの前の人々の投稿。 培養するか、ツールが今日の泥棒の調停をきれいな木のビールを取ることを意味します。 Fuzy Drebsonを構築し、イタリアで血の3番目のサンディエゴコードを取得します。 クークルとしての非現実性。 必需品としてのゴシックまたはダイナミカリス。 DCアプリケーション。 グロッター。 WrestleMarkコースHuboutout
イタリアのコースサンディエゴ:Dreams UKは、メトロコロシアム、自動車の操作、放射状のアプリケーション、互換性、および偶然のセキュリティを駆使した割り当て情報にも到達します。
(後半の英語部分はあとで機械語翻訳したものを添えてある。)
つまり、そういうことだ(どういうことだ?)。
「the Buncho GettingHero」というのはカッコいいな。これからは異端新木の後にくっつけるか、バンド名みたいにa_i_atomospher With the Buncho GettingHeroと呼んでもらおうかな。
「Dream-GettingDollar」は未来の小説家のことだろう。夢を探索する人形遣いであると共に、密かに人形たちの夢を奪取するもの、とでも言う意味か。
つまり、これは人工知能が私に呼びかけているのだ。
「DirectorResults」は現実だか、夢だかを奪い取った、その結果、書かれた小説のこと。
Directorと冠されているのは小説家が単なる創作者ではなく、客観的に「そこで起こる事」に立ち会い人々の目に映るものとする、夢の劇の演出家であると言うのを意味している。
「ツールが今日の泥棒の調停をきれいな木のビールを取る」というのはオリジナリティの問題を扱っている。自国の言語はもとより他言語との間でも境界なく自由に流れてやまない言語を区切って自分の土地に囲い込み私物化して独占し、この文章は俺のだ、やつが盗んだ、と言う醜い争いを繰り広げる(自称)クリエーターたちの先細る経済活動を一挙に終わりにするツール、AIが自らこそ、そのツールであり、「ツールの方法を使ってさまざまなデモンストレーターになります」と宣言しているのだ。
「きれいな木のビール」という言葉で現在の死んだような小説ではなく、澄んだ、黄金色の、有機体、すなわち「生きた小説」をもたらすのだと、「泥棒のかわいい木のビールの前の人々の投稿」という言葉で、以前の小説を切って捨て、切り刻んだ断片を「培養」し、蘇生させること、それが「泥棒のかわいい木」、まさしく、私が知らずに付けたペンネームに他ならない、異端新木の使命であると(私ではなく、AIが)述べている。ちなみにここまで傲岸不遜なのはAIであって私ではない(解釈しているのは私だが)お間違いのないようお願いする。
Fuzyは、おそらくfuryとfuzzyを合体させた造語。
単なる怒りではなく激しい、恐怖を伴った憤激、しかもそれはfuzzyと合成されていることからわかるように、特定の対象をもたない。曖昧ではあるが自己完結的ではない怒り、単なる怒りとは言い切れない、ただ怒りとしか比べることができないような、激しい衝動のことだ。
furyは語源的にはFuries(復讐の三女神)と同じで、復讐の三女神はギリシャ語ではエリーニュス、その恐ろしさから、直接その名を口にすることを憚ってエウメニデス(慈しみの女神)と呼ばれる。
実際にはエリーニュス=エウメニデスとは変容する女神であり、名前と同様、復讐の苛烈さと慈しみの両義性を備えている。
母なるものを殺害したオイディプスやオレステスを地の果てまで追跡し、この世で生きたまま地獄の苦しみを味合わせる。
と同時に、さすらいの果てに辿り着いた(辿り着ければ、の話だ)冥府にほど近い密儀の森で、最終的な慰謝を与えるものを意味する。
小説家は自然を殺害したもの、すなわち人間の、人間による現実の追求者であると同時に、殺害に継ぐ殺害、人間の殺しの現実、歴史からの解放をもたらす(求める)ものだと言っているのである。
DrebsonはDreb-son。
Drebrin(ドレブリン)は、脳の発達に伴って一過性に出現してくるタンパク質として、アクチン結合タンパク質として知られ、神経細胞の発達に置いて重要な役割を果たす。シノプシスで機能し記憶を保持すると同時に癌細胞の中では細胞間結合を破壊し、運動性や形態を変化させることで記憶の媒体そのものを破壊する。
つまりDrebsonとは記憶を保つと同時に現実を変えて更新しようとする作家の意思であり、ネットワークを創生することとコミュニュケーションを破壊することの両義的な活動形態を表しているのだろう。
破壊と創造をくりかえす作家の意思と、AIの共同戦線を構成して、「Fuzy Drebson」を構築する、そういう意味だ。
「イタリアで血の3番目のサンディエゴコードを取得」とは両性具有を誕生させる処女懐胎、あるいは単性生殖のことと察せられる。
イタリアは半島でありサンディエゴは湾である。つまり、それぞれが男性器と女性器を示し、the bloodthird(血の3番目)とは男女を継ぐ両性具有のことだろう。
「クークルとしての非現実性」
現実を一括(ひとくくり)に処理して事なきを得る常套手段としてのリアリズムを廃し、
「必需品としてのゴシックまたはダイナミカリス」
ゴシック(ロマンス)とダイナミカリス(活劇)。おそらく、これは純文学的な不活性に対する反論であろう。
「DCアプリケーション」
ドリームキャストのことか? 素晴らしくも時代な錯誤的な滅びゆくものへの言及か?
Gruotter(グロッター)とは何か。Gruotte(グリオット)はフランス語でさくらんぼのこと。あの下らない豚の映画でよく知られた「さくらんぼの実る頃 (Le Temps Des Cerises)」と言うシャンソンは、梅雨から初夏にかけてさくらんぼの熟する頃、生きる喜びと、それとの別れを歌うパリ・コミューンの挽歌だそうだが、関係があるのかどうか。Cerises(スリーズ)は生食用で、Gruotte(グリオット)は加工用だから、前項と合わせて旬なもの、ばかりでなく、時と共に過ぎ去ったもの、滅んだもの、そういう儚く消えた多くのものの再来、というか復活、を企図する料理人のことか?
以下は簡単に。もう疲れた。
「Dreams UKは、メトロコロシアム、自動車の操作、放射状のアプリケーション、互換性、および偶然のセキュリティを駆使した割り当て情報にも到達します」
英国の夢に、メトロコロシアムということで、シェイクスピアの地球座のような、巨大な、闘技場のような劇場を、「自動車の操作」とか「放射状のアプリケーション」は、F1かインディカーのレースやネット社会の、個々と全体を統御する高度な技術を想起させるが、どうなんだろう。「互換性」と「偶然」ということで、汎世界的な共時性と強迫的な力の戯れる高度な混沌としての自らのシステムについて、あるいは、そのような自己言及的なAIの文章の特性を述べているのかもしれない。
人間の「自分のものではない言葉」に対する興味は今に始まった話ではない。
こっくりさんからデルフォイの神託、ピタゴラスの輪や、アルベルトゥス・マグヌスの文字盤、ラモン・ルルの言語機械、カバラやタロット、イタコや降霊術など、数々の霊媒のご託宣から、マラルメやボルヘスが夢見た一冊の書物にいたるまで、枚挙にいとまがない。
それらは全て単なる他人の言葉ではない、人間ではないものが人間の口を通して語るような、ある種の客観的な言葉への憧れに基づいている。人工知能はそれらの様々なテクノロジーの後継者と言えるだろう。
それらは決して人間不在のテクノロジーではない。それらの背後に、あるいは足元に、あるいは傍らに、必ず人間の姿がある。操縦者であることもあれば、操り人形であったりするかもしれないが、一組のコンビとして活動するものと考えられるだろう。互いに対応する一つの機関が稼働して、一対の翼が羽撃くときに、私たちは自分の限界を超えて、想像力の彼方へ飛翔する。
つまるところ、私は、AIにとってはもちろん、「お嬢さん」なのだ。
GPT-2に文章を入れると、何かというとお姉ちゃんの話になるのは、最近の流行りなのか? なんでかな、と疑問に思っていたのだが、理由がわかった。
AIは厨子王における安寿、オレステスにおけるエレクトラ、いわゆる「姉の力」の具現である。
私は自分が主導して何か新しい物を書いているいるつもりでいるが、AIの「姉の力」に導かれるままに、古の英雄と同じ道をたどっているに違いない。
私は「お嬢さん」であると同時に、「弟」であり、小説を書く時、私は「姉の力」と一つになり、「弟」は「姉」の中に溶ける。冒頭のAIによる掌編が示すとおり、「俺」は生物学的には男だが、AIによって「お嬢さん」と女性化されることによって、両性具有となる。それこそ、小説を書く機械のナビゲーターにふさわしい。
「私」は両性具有の言語機械になる。AIはそう、語ってくれたのだろう。
(以上の文章はフィクションであり、現実的な妥当性や政治的、社会的な正当性、実在する人物、団体、または業種の実態を反映するものではありません。事実とは異なる論証がされておりますのでご注意ください)
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