あこがれ

「もうそんな時期か」

「そうだね。でもさ、もう少し先の話」

月は、真南を向いている。

「どうしたの」

「そういえば、月の話。今日初めて聞いたんだ。なんか知ってる?」

「いいや。僕もまだよくわからないや」

月が僕の方へやってくる。顔を覗き込んでくる。

「それよりも気をつけて。月の上を歩くんだ、僕たち」

僕は月に笑いかけた。

月は、それから少し考えてから、頷く。

「わかった。じゃあ行こう」

「うん」

それから僕たちはこれから、色を追わなくてはならない。月が遠く、遠く、遠く、遠く行って、僕は月に教わった通りに行った。けれど、僕はすこし不安になっていた。何かに怯える気持ちが大き過ぎていた。

それでも、僕は月の背を追いかけた。

今でなければ、この先に、月の声が響くはずなどないのだろうとそう思ったから。

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