第3話 冒険者ギルド到着

「おーい、皆さん、町に着きましたよ」


 “共に歩む”は馭者のライヤーに起こされ目を覚ました。朝日が馬車の中まで入り込み、彼らの視界を明るくした。気づけば馬車の外からは様々な生活音が聞こえる。


 彼らは王に啖呵を切ったこともあり、すぐに国を出るつもりだった。しかし昨夜の宴であまりに多く飲み食いし食料が少なくなっていたので、町で色々買い足すことにしたのだ。


「うううー、気持ち悪い……」

「ギルダは流石に昨日飲みすぎていましたね」


 ギルダとエリーザは昨日飲み勝負をしていた。結果はギルダの惨敗、エリーザの常勝は止まることがなかった。酒精の強い酒の瓶をギルダとエリーザで4個ずつ開け、敗者のギルダは死にかけ、エリーザはいつもどおりという状況だった。


「ギルダはダウンしているみたいだから、そこで寝とけ。よし今日の計画を発表するぞ。まずは各々の武器等の買い足し、それから食料品も買っていく。ギルダの必要なものは後で聞いて俺が調達してくる。他に必要なものはあるか?」

「ラクヤ、おそらく午前中で終わりますよね。そしたら冒険者ギルドで一個依頼を受けていきませんか?」

「あー、それもいいな。暇だし」

「僕も賛成」

「私は馬車の中で応援してる」


 冒険者ギルドとはこの世界に蔓延る魔物や魔族を討伐する人々の集まりだ。しかし仕事内容は様々で皿洗いのバイトや人探しなどもあり、実際のところは命をかけられるなんでも屋というのが正しかった。


 “共に歩む”の一日のスケジュールは最低限必要な事を済ませたら、基本は自由だった。その結果、昼からどんちゃん騒ぎすることも多々あった。しかしこの日は依頼を受けることにしたようだ。


「じゃあとりあえずは個人行動、13時になったらギルド前に集合でいいな」

「分かりました」

「了解」

「皆頑張れー」


 こうして彼らは別行動をすることとなった。エリーザは武器である錫杖のメンテナンスへ、ジャギルは趣味である食べ歩きに、ギルダは馬車で嘔吐を我慢し、ラクヤはそんなギルダから一生懸命必要なものを聞き出していた。


 しばらくたち13時になるとエリーザとジャギルはギルドの前に着いていた。


「ジャギルさん食べ歩きはどうでしたか」

「相変わらず全部まずかったよ」


 ジャギルは食べ歩きしたときに美味しかったと返したことがなかった。しかしジャギルは傲慢というよりも、美味しさが理解できなくて悲しいというような表情をしていた。


「先に依頼だけでも見ておこうか」

「それが良さそうですね」


 彼らはギルドの中に入った。ギルドの中はいつもどおり人々の話し声で満たされていた。昼間から酒盛りをする人たち、壁に貼られた依頼紙を難しそうに見つめる人たち、それぞれが思い思いに行動し音を立てていた。ガヤガヤとした声や食器がぶつかり合う音は雑音なのにも関わらずお互いを尊重し合うような調律を奏で、思わず聞き惚れてしまうような美しさだった。

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