第208話 宮古島合宿1日目
上空にて安定飛行になりシートベルトサインが消える。
目の前にいた客室乗務員の方々が座席から立ち上がり忙しそうに食事と飲み物の準備を始める。
俺はスマホを取り出しWi-Fiでネットに繋ぎ行き先の情報を集める。
今回の行き先は宮古島だ。
昨年行った沖縄も海は綺麗だったが、スマホで画像を見る限り海の青さは段違いに感じた。
さらに調べていくと、宮古島で開催されているトライアスロンの画像が写し出される。
どこまでも続くサトウキビ畑を走る選手の姿に思わず目を取られる。
青い海、白い砂浜、そして照りつける日差し、まさに夏を感じられる場所だ。
俺の大好きな夏、からっとした暑さの中で一度は走ってみたいって、合宿したいって子供の頃から夢見てきた。
去年の沖縄では叶わなかった俺の夢……それがもうじき叶う。
しかも……好きな人と一緒にだなんて……。
陸上部のゴタゴタはとりあえず忘れよう……俺はそう決心する。
客室乗務員の方が軽食を持ってきてくれる。
とりあえず腹が減っていたので俺はそれを頬張る。
そして一息つくと隣に座る円を見た。
円は食事も取らず一心不乱にスマホを弄くっていた。
「食べないの?」
「うん、もうちょい」
「……何してるの?」
「何にも持って来なかったからねえ、とりあえずホテルの予約と車の手配をして、着るものとか売ってる場所を調べて……」
「そ、そうか……」
「ふふふ水着も買わないとねえ」
円は俺を見て小悪魔のように微笑む。
「み、水着……ですか……」
さっき見たスマホの画像と円の水着姿が重なる。
もうそれは想像するだけで神々しさを感じてしまう程だった。
沖縄の時に見た円の水着姿……グラビアアイドル以上のスタイルに、スーパーアイドル以上の可愛さ、それと宮古ブルーと言われる沖縄の中でも群を抜く青い海……。
もうそれだけで……脳汁が漏れ出す。
今回は本当にヤバいかも……自分を押さえる事に自信がない。
俺は食事を終えると一旦落ち着こうと窓から外を見つめる。
雲一つ無い青空が見えている。
宮古島でもこんな青空と青い海が待っているのだろうか……。
期待に胸を膨らませ3時間の空の旅を堪能し、飛行機は宮古島に到着した。
……宮古島は大雨だった。
優先的に飛行機を降り、預けている荷物も無いので一気に外に出る。
外は着陸時と同様に雨が降っていた。
しかもさっきよりもさらに強まりどしゃ降りになっている。
そのせいで飛行機からは景色も青い海も殆んど見えなかった。
「残念スコールだねえ」
「そっか……これが」
南国特有の猛烈ば雨に歓迎され、さっきまでのテンションが落ちていく。
「えっと……あれかな?」
円は俺達を待つ黒い大型の車を指差す。
屋根のある所に車を停め俺たちを待っている運転手さん。
荷物を持っていない俺達を見ると少し不思議そうな顔をするも、直ぐに笑顔で車の扉を開けてくれる。
「すみません、ホテルの前に買い物に行きたいのでここに寄って貰えますか?」
車に乗り込むと円はそう言って運転手さんにスマホを見せた。
相変わらず雨は降り続いている。
運転手さんは慣れているの? ワイパー全開で車をゆっくりと発進させた。
風と雨でヤシの木が揺れている。
身長程の高さになっているサトウキビ畑も見える。
その景色に沖縄、宮古島にいる実感が少し湧いて来る。
そのまま10分程で空港近くのショッピングモールに到着すると、ハイヤーを待たせ俺達は、主に円は買い物に走る。
俺は円が下着売り場に入った所で別行動を提案し円と別れた。
そのまま1時間弱、とりあえず俺は水着だけ買いお土産等を見て時間を潰しハイヤーに戻る。
雨は強弱を変え相変わらず降り続いている。
円は少し遅れハイヤーに戻ってくる。
「荷物は?」
殆ど手ぶらの円に俺はそう尋ねる。
「一杯買っちゃったからホテルに届けて貰った」
「一杯……」
相変わらずの金銭感覚に少し戸惑うも急遽の旅行なので若干引く程度に留めた。
しかし……俺はこの後ドン引きする事になる。
到着したホテルがあまりに高級過ぎて……。
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