第23話 会長からの誘い
「また……」
放課後、またもや校門の前で僕に立ちはだかる金髪美女が……。
白のトレーニングウエア姿で校門の前で仁王立ちしている。
周囲の生徒は会長に頭を下げながら避ける様に校門を出ていた。
なので僕もと、軽く会釈をして通り過ぎようとした。
「待ってたわ」
やはり目的は僕だった……まあ、わかっていたけど。
会長は僕を蔑む様に、ゴミを見るかの様に睨み付けている。
高等部生徒会長、陸部短距離のエース、最近では金髪の女王と言われている袴田 岬は、これでもかというくらいの偉そうな立ち方で僕の通路を塞いでいた。
「いや、あの僕今日は用事が」
この間の陸上部の雰囲気はとても良いとは言えない。会長が抑えてくれているのはわかるが、やはり誰もが僕を拒絶している空気がそこにはあり、簡単に近寄ってはいけないと僕はそう感じていた。
「……貴方、そ、そのゴールデンウイークの予定とかって、ある? その……旅行とか……」
「え? えっと……まあ、今のところは、勉強するくらいですかねえ?」
旅行なんてもう何年も行っていないし、転勤が決まったばかりの父、益々忙しく更には父の元にちょくちょく行かなければいけなくなった母、必死に勉強をしている妹……そんな余裕は全く無い。
「そ、そう! あ、う、ううん、え、えっとね、1日ね、その……1日私に空けなさい!」
何だろう、この定番の様なツンデレは? 一瞬嬉しそうな顔に変わり直ぐに照れた表情、最後には元のゴミでも見る様な顔に変わった会長。
「まあ、1日ぐらいなら?」
「ほ、本当に!」
今まで見せた事の無いくらいの嬉しそうな表情に変わる会長……でも一体何が目的なのだろう?
「まあ、でも陸上部の奴らとは出来れば……」
記録会に来いとか、合宿に来いとかはちょっと……。
「ふ、二人……私と貴方の二人で……だけど、どうかしら」
「ああ、それなら」
「本当! じゃあ連絡先を交換……して……頂戴!」
もうさっきからころころと変わる態度と表情に僕は思わず笑いそうになるが、ここで笑ってまた不機嫌になられても困ると僕は必死に堪えつつ、お互いぎこちなくスマホを操作しメッセソフトを立ち上げアドレスの交換をする。
仕方なくという雰囲気の中どことなく嬉しそうな会長。
「ふふ……あ、じゃ、じゃあ連絡すりゅから!」
真っ赤な顔で、思いっきり噛みながらも、会長はとりあえずその場を取り繕うかの如く、すました顔で僕を一睨みし、何も言わずに踵を返すと、長い金髪をたなびかせその場を後にする……でも……なんか途中からスキップしながら陸上競技場に向かって行った。
「えっと……なんか……会長……キャラが崩壊してないか?」
一体なんなんだろうか? 会長は何が目的なのだろうか? 今さら説教? それともまたコーチ依頼? とにかくゴールデンウイークに何か? 僕は一抹の不安を感じつつ、もう少し先の事とあって考える事を止めた。
「もう直ぐ1ヶ月か……」
あっという間に過ぎていく、季節が、年が……でも……僕は止まっている。あの時から。
いつまでこのままなんだろうか……そう思いながら僕は空を見上げた。
遠くに鳥が飛んでいる、空高く、天高く。
飛んでいきたい……どこかに……。
……僕は一度首を振って、学校を後にし白浜のマンションに向かった。
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