幽霊・ピンポン玉の音

 私はまるで幽霊だ。

 ちょっと前に辞めた部活に、気まぐれで顔を出している。ホールの隅に座っていて、ふとそう思った。

私は元演劇部員だ。諸事情で辞めてしまったけれど、時間ができたので、顔を出しにきた。――けれど、大会の前に急に辞めたのだから、周りに迷惑をかけていたのは当たり前で、本当は気軽に顔を出せる立場でもなかった。

部活を辞めた今でも、友人たちは私と話してくれているが、他の人とは、やはりどこかよそよそしさを感じる。

 私の学校では、主に昼休みと中休みに部活動が行われる。中休みは、私にとっては放課後なのだが、夜間の生徒はまだ授業があるので、放課後とは言えず、中休みという名称で、多くの生徒が部活に勤しんでいる。

 部活動が始まる前に、部活では今何をしているのかと、友人に尋ねてみたところ、冬公演に向けての分担を行っているそうだ。

 あぁ、私のせいなのかもしれない。友人の口から“冬公演”その単語が出てきたときに私は自責した。私が辞めたのは、地区大会の前で、もしも地区大会を突破していたならば、今頃県大会への練習をしていたはずなのに、冬公演、それは地区大会での落選を物語っていた。

 私がいれば、地区大会を突破できたかもしれない。なんて言うほど私の自尊心は高くないから、そうは思わないけれど、私が大切な時期に部活を辞めたせいで、他の部員のモチベーションを削いでしまったのは確かだろう。


 ホールでは、演劇部と卓球部が活動している。演劇部が円を作って、あれやこれやと話している横で、卓球部は台を広げてラリーをしている。

 ピンポン玉の音が、カツンカツンとリズムを奏でている。正直鬱陶しい。私は結局のところ、勉強にバイトって、そんなありふれた忙しさを建てに、演劇部から逃げ出したのだ。そんな私が、今、気まぐれで部活に顔を出している。よく考えなくても可笑しな話だった。真面目そうに活動している部員らをみると、なんだか今すぐホールから出て行きたいな、そう思った。

 考え事をしていると罪悪感とか、意味分からん感情で頭が一杯になっていた。きっと卓球部のラリーの音が、良くない考えを助長しているのだろう。


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