第9話 ダンジョン改革①

私とレベッカ夫人はカービンさんと兵舎の敷地に戻って来る。


「私達は少し休憩してから、明日のダンジョン任務の打ち合わせをするわ。夕食には兵舎で第7部隊と一緒に食べるので、また後でね」


レベッカ夫人はカービンさんに声を掛けて、私と一緒に広くなった敷地の一画に移動する。


今回は人数も多いので、前回と同じように敷地内でテント泊する予定である。兵舎に何とか泊まれないことは無いが、訓練も兼ねてテントに泊まるのである。


私は第7部隊の分のテントをストレージから出していく。

テントも単二魔力バッテリーを使う事で、魔力量に余裕ができ、結界の強化だけでなく、空間拡張も強化して、ひとつのテントで12人が泊まれるようにした。


第7部隊用が4張りあり、1張りは私とレベッカ夫人の分になる。


別にレベッカ夫人と一緒に寝るわけではない。内部が分かれていて、私の部屋には他の人は入れなくなっている。


会議ができるような大きなテーブルのある部屋と、レベッカ夫人の個室や第7部隊から護衛として数名が泊まれるようになっている。


テントに入るとテーブルのある部屋に行く。


「アタル、あなたの部屋を見せてちょうだい」


まさか、昼からそんな事はしないよね!?


断る事もできないので、レベッカ夫人が入れるように設定を変更して移動する。


「あら、ここが寝室なのね」


「ええ、そうですよ。あっ!」


レベッカ夫人に背中を押されベッドに倒れてしまう。振り向くと、そこには何も身に着けていないレベッカ夫人が立っていた。


一瞬で服を収納に!?


「今日は私の順番よ」


いやいや、なんで昼間から!?


「でも、」


「夜は兵士たちにバレちゃうじゃない。それに、少し試したいことがあるし。アタルは何もしなくても大丈夫よ。ペロリ」


試したいこと? 何もしなくて大丈夫? なんで舌なめずり!?


「いや、でも、あっ!」



それから夕方までレベッカ夫人の房中術で、私は蹂躙されてしまった。

そして、何となく試したいこともわかった。


レベッカ夫人は魔エッチをやりたかったのだろう。


それも私が魔力操作して魔力を混ぜ合わせるのではなく。レベッカ夫人が魔力操作して魔力を混ぜ合わせてきた。


まだ上手く魔力操作できているとはいえないが、魔エッチであることは間違いなかった。


まだレベッカ夫人とは3回目だよ。どうなっちゃうのぉ!?


「ふふふっ、あともう少しで完成しそうね。ペロリ」


危険だぁーーーーー!


最初から不思議な色っぽさと、無邪気な純粋さがアンバランスで魅力的だったが、無邪気な妖艶さになった気がするぅ~。


それに魔エッチも私のとは何か違う気がする。

私の魔エッチは相手に魔力を与えるように混ぜ合わせるが、レベッカ夫人の魔エッチは、まるで魔力というか色々な物を私から吸い取っている感じがするぅ~。


何か目覚めさせてダメなものを、目覚めさせたのかもしれない……。


その日、色々とレベッカ夫人に吸い取られて私は、夕飯を食べるとすぐに眠りに就いたのであった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



翌朝、まだ少し薄暗い中をダンジョンへ向けて出発する。


ダンジョン町の中を抜け公的ギルドの建物から、ダンジョンの入口に続く通路に出る。


「暫くここにて待機せよ!」


レベッカ夫人が大きな声で指示を出す。


私とレベッカ夫人、カルアさんとブリッサさんだけ先にダンジョンの中に入って行く。


1層に降りた所には石造りの入口の無い小屋がある。


「本当に建造物が残っているのね」


レベッカ夫人が小屋を見て話す。

ダンジョン周辺の外壁を造った時に、この小屋もどきを設置しておいたのである。


「すでに5日は建物が残っていますねぇ。これで心配なく買取所を設置できそうです」


私はそう話すと、小屋もどきをストレージに収納して、本来の買取所の建物を設置する。


「うわっ!」


ブリッサさんが大きな声を出して驚く。

そういえばカルアさんは大賢者区画で、私がストレージで大きな石や建物の一部を出し入れするのを何度も見ているけど、カルアさんも建物丸ごとには驚いてはいるようだ。しかし、ブリッサさんはテントより大きな物の出し入れは初めて見るから、この反応も仕方ないと思う。


「アタルさんの予想外の行動になれないと大変よ」


「は、はい!」


レベッカ夫人が失礼な事をブリッサさんに話している。


まあ、そういう扱いも慣れたけどねぇ。



中に入ると買取所の窓口が正面にある作りになっている。


窓口にはスライム板で仕切られており、横には大きな掲示板がある。

窓口には素材を入れるための投函ボックスが置かれていて、ここに素材や魔石を入れると公的ギルドの鑑定部署で査定が行われ買取がされる。横には大きめの台のようなものがあり、ここに大きめの素材を置くと、窓口の担当者が確認してから公的ギルドに亜空間経由で送られることになる。


掲示板は表示パネルの魔道具で、窓口や公的ギルド経由で表示を変更できるようになっている。今は『この買取所は試験運用中です』と表示され、3層までの素材で買取できそうなものが価格と一緒に表示されている。


窓口の横には健康ドリンクとポーションの自販機のようなものがあり、自前のカップを置き、必要な金額を投入して冒険者ギルドカードや公的ギルドカードをかざすと、1回分の量が置かれたカップに出るようになっている。


価格は公的ギルドカードだと健康度ドリンクが銅貨2枚、ポーションが金貨1枚でギルドカードからの引落になる。


冒険者ギルドカードで購入すると健康度ドリンクが銀貨1枚、ポーションが金貨4枚となり、価格に露骨な差別化をしてある。


自販機の横には魔道具ATMを設置してあるが、現状では封鎖して使えないようにしてある。今後の冒険者ギルドとの話し合いが終わるまでは封鎖する予定だ。


さらに魔法で洗浄ウォッシュする、お金を払って使えるシャワー室みたいな空間もある。


建物は結界で守られているが、基本的には魔物が侵入してこないセーフティエリアに建物はある。魔物の氾濫が起きた場合と、問題を起こした冒険者を排除するための結界になっている。


「これほど便利な環境ができれば冒険者も助かりますねぇ」


カルアさんが感心したように話す。


「さあ、あとはギルド職員に任せましょう」


レベッカ夫人がそう話すと、ダンジョンを出て他の兵士やギルド職員、様子を見に来たカービンさんと第3部隊の数名を連れて戻ってくる。


ギルド職員にはすでにマニュアルを渡してあったので、テキパキと建物の中へ入り準備を始める。


第7部隊の半数は先行して魔物の討伐を始めた。


第3部隊の兵士は驚いていたが、カービンさんは何か諦めた表情で質問してきた。


「もう検問を始めて、冒険者を中に入れて大丈夫なんだよな?」


「ええ、お願いするわ。私達も出発しましょう!」


レベッカ夫人が代表して返事する。

カービンさんに挨拶して、私とレベッカ夫人、私達の護衛と一緒にダンジョンを進み始めるのだった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



カルアさんやブリッサさんが先行して魔物を討伐しているので、ハイペースでダンジョンを進んで行く。


途中で昼休憩を取る。

カルアさんやブリッサさんの厳しい雰囲気に、第7部隊の兵士は緊張している様子だが、どこか楽しそうにしているのが前回の調査を思い出させる。


午後3時には3層から4層に降りる階段に到着した。

冒険者は探索中なのか誰もいなかったので、急いで4層のセーフティエリアに公的ギルドの建物を設置する。


この建物は1層とは違い、買取所だけでなく食堂や宿泊設備まである。今日はこの建物の3階を貸し切りにして我々は宿泊する。


今日からここで常駐して働く第7部隊の7人は、テキパキと窓口で準備を始めていた。1層のギルド職員と同じように、事前にマニュアル確認したのであろう。


私はこの時にあることに気が付いた。


あれっ、テントで宿泊することはないじゃん!


地上でテントでの宿泊訓練が必要なかったことに、ようやく気が付いた。


それでも他の機会の練習になったと思う事にするのだった。

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