第9話

俺は紬のクラスメイトであるゆりを家の中に入れてやることにした。

というより、そもそもゆりがここに来た理由について知りたい。

「ま、とりあえず適当に座っててよ」

「あ、どもー」

俺はリビングにゆりを通すと、キッチンに行き冷蔵庫からジュースを取り出す。

ジュースをコップに入れてリビングに戻ると、色々と露出している部分が多いゆりが周りを見渡していた。

「はい、俺の家にはこんなものしかないけど」

「いえいえ、そんな気を遣わなくてもいいのにぃー」

「ということでだな......君がここにきた理由は?」

俺は色々と面倒なことになる前に、ゆりが俺の家にきた理由について問うてみた。

「んー......簡単に言えば、紬ちゃんに学校に来てほしいから、ですね」

ジュースを飲みながらそう言うゆり。

そうはいうがな......あいつは、家から出ないではなくそもそも自分の部屋から出ないのだ。

そうなると、俺としてもどうしたらいいか分からなくなってくる。

「そうか。でも、どうして学校に行かせたいんだ?」

「理由としては二つあります。まず一つ目が、義務教育だから。そして二つ目が――紬ちゃんと友達になりたいからです」

「友達になりたいから?どういう意味だ?」

「どういう意味って......そのまんまじゃないですかー。あたし、学校にいる人全員と友達になってますから」

ん?学校の全員と?......とんでもないなそれ。

ということは、本当のリア充か?......そんなのどうでもいいか。

「だから、紬ちゃんとも友達になりたいんですっ」

「へぇそうか......」

友達になるぶんにはいいと思うが、逆に紬がどう思うかだよな。

「それでお兄さん。今紬ちゃんっていますか?」

「え?ああ、いるけど......ちょっと待ってろ」

「あ、はーい」

俺はゆりにそう言って、紬の部屋へと向かった。

「おーい紬、お客さんだぞー」

......。

あれ、もしかして寝てんのか?

「おーい紬!」

声だけではなく、少し強めにドアをノックする。

それでも反応は無し。

「うーん、やっぱ寝てんのかなぁ......」

俺はそう思い少しの間下を見たとき。


ゴッ!!


いきなりの衝撃と痛さで、自分自身もびっくりした。

「......な、なに?」

何が起きたかと言うと、紬の部屋の扉が急に開き、俺の額に大ダメージを与えたのだ。

「あ、紬......お前にお客さんだ」

「......追い返して」

「えっ?なに?」

紬の声があまりにも聞こえない為、俺は紬の近くに寄った時。


ゴツッ!!


「痛ってぇ!?」

何が起きたのか俺にもよく分からなかった。

紬を見ると、手にはタブレットらしきものを持っていた。

そして数秒後、頭に少しの痛みが走った。

分かるとは思うが、そのタブレットで俺の頭を殴ったという事だろう。

なんという暴力......どうして。

「......お、お前の声が聞こえないから近くに寄っただけなのに......」

「あ......そ、そうだったの......と、とにかく、そのお客さんお、追い返してよ」

「えっ?ど、どうして?」

「......ど、どうしても」

そうは言うがな......でも、追い返す理由なんかないじゃないか。

「......い、いやしかし......!」

俺はそこまで言いかけた時、紬がなにやら小さなものを俺に渡してきた。

「......はいこれ」

「え?な、なにこれ......」

紬が渡してきた物とは、ワイヤレスイヤホンだった。

「な、なぜに?」

「いいから付けて。あと、私にお兄ちゃんの電話番号教えて」

なぜに電話番号を?

俺には意味が分からなかった。

「ほら早く」

「あ、ああ、分かったよ......」

俺はどういう意味かも分からず、紬に俺の携帯番号を教えた。

「これでよしっ......ほ、ほら、お兄ちゃんは戻っていいよ」

「え、え?ちょ、紬!どういう事――」

俺はどういう事かを知ろうと声をかけたものの、紬は部屋の扉を閉めてしまった。

「どういう事だか......」

俺の手には、小さなワイレスイヤホンが残っていた。







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