第8話

夏祭りが終わって次の日の昼。

俺は特にやることはなく、ただリビングで昼寝したりテレビを見たりしていた。

一応、さっき紬には昼飯を届けに行ったのだが扉を開けてくれなかった。

朝のうちはダメでも、夜なら開けてくれるだろうとなぜか確信を持っていた。

そう思っていた時。


ピンポーン。


「ん?誰だ......?」

突然家のチャイムが鳴り響いた。

俺の考えの中ではとっさに芽衣が浮かび上がった。

いやでも、なぜ芽衣がこの時間に俺の家に?

俺はありえないと思い、芽衣ではないことは確信した。

だったら......誰だ?

そんな仲がいいような友達的な存在は俺にはいないと思っている。

そう考えている間にも家のチャイムが何回も鳴り響く。

「はいはい!」

俺は駆け足で玄関に行き扉を開けた。

「どちらさま――っと」

「あっ、どもー」

そこにいたのは、ちょっと暗めな茶髪で制服姿の美少女が一人。

「え、えーと......君は?」

俺はそのかわいさに目を奪われそうになったが、なんとか視線を逸らした。

「あ、あたし、紬ちゃんのクラスメイトですっ!」

モジモジする様子はなく、はっきりとそう答える少女。

「あ、そうなんだ。それで、どうしてここに?」

俺はそう言うと、その少女はよく聞いてくれたというように胸を張り。

「はい!あたし、紬ちゃんを学校に行かせるべくここに来ました!」

「は、はぁ......」

ちょっと失礼だと思ったが、そんな声を発してしまった。

「むぅー、なんですかその反応ー。まっ、いいです」

そしてその少女はぴょんとジャンプをして俺の所に詰め寄った。

「あたしの名前は、石原ゆりです。普通にゆりって呼んでくださいっ」

明るくそう言う少女。

だが、この状況なぜかゆりに詰め寄られている俺氏。

「へへ......っ」

ゆりは少し笑うと満面の笑みを俺に見せた。

その笑顔は何とも言えないほどにめちゃくちゃかわいかった。

でも残念。俺には紬がいる。紬の方がもっとかわいいからな。

「と、とりあえず......中入ったら?」

恐らくゆりは、その笑顔で俺を落とそうとしているのだろう。

まあ、大抵......と言ったら失礼だが、普通の男子ならこの笑顔で完璧に惚れるに違いない。

「......あれ、意外にお兄さんってこれでも落ちないんですねぇ。普通の男の子なら落ちるんだけどなぁ......あ、もしかして、女の子には興味が無かったりします?!」

「ホモですかって言いたいのかよ!ちげぇわ!」

ホモではない。

ましてやショタコンでもない。

「なーんだびっくりしたー。じゃあ、なんでこの笑顔でも落ちないんですか?」

俺の顔を覗き込むようにしてゆりが聞いてくる。

「俺の妹の方がかわいいからだ」

これだけは断言して言える。

絶対に紬の方がかわいい。

「ふぅん......にゃるほどぉ~」

「......なにが言いたいんだ?」

「いや別にぃ~、ただ、お兄さんと友達になりたいなって思って」

「ん?......ま、まあ、友達くらいなら......なってやってもいいけど」

というか、ゆりと友達になっところでデメリットがあるとは思わない。

「それじゃあ、今日からよろしくお願いしますお兄さん!」

「お、おう......!」

今日から俺はゆりと友達になってしまった。


















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