第7話

今更だが、今の時期は夏。

夏にやることと言えば、バーベキューとかプールとか......その他色々。

今日はそんな夏の楽しみでもある、夏祭りに行くことにした。

俺としては紬と一緒に行きたかったのだが、紬は現在引きこもり中なので、仕方なく俺は誰か行ってくれそうな人を探すべく、午前中は学校に行ってみた。

「今日?あー、俺今日予定あるんだわ」

......。

「ごめんねー、あたしちょっと予定あるんだー」

......。

うーん、ほとんどの人は予定などがあり行けないらしい。

「それだったら......芽衣なら行くだろうな」

なぜか分からないが芽衣なら行ってくれるだろうという確信があった。

ということで、以前図書室に行ったときに会ったことがあるので、図書室に向かう事にした。


案の定芽衣は、窓側の席に座り本を読んでいるようだった。

邪魔したら悪いかなと思いつつも、俺は芽衣と向かい合うような形で椅子に座った。

「ふぁぁ......――って!?な、なんで、陽翔がここに?!」

本を読み終えたのか少し欠伸をした時、芽衣と俺は目が合ってしまった。

目が合って欠伸をした恥ずかしさのせいかちよっと顔が赤くなっていた。

「あ、えーと......今日夏祭りがあるから、誰か行かないかなって思って」

「あ、ああ!それで、ボクを選んでくれたの?」

「い、いやその、芽衣なら行くかなって思って」

「も、もちろん、陽翔となら行ってあげるよ!」

ちょっとウキウキしたようにそう言う芽衣。

「そ、そっか。なんか急にごめん」

「?どうして陽翔が謝るんだい?謝ることなんてないのに」

「あ、あはは......」

ちょっと乾いたような笑いをする俺氏。

とはいえ、これで誰かと行くことが出来るようになった。

というか、普通に考えれば一人でも行けるんだけどな......ま、まあ、誰かと行った方が絶対楽しいじゃん?

だから、芽衣と行ったとしても楽しいはず。

「じゃあ今夜よろしくね」

「うん!ボクこそよろしく!」

そんな会話を交えつつ、俺は外の景色を眺めていた。


さて、時刻は芽衣と約束していた夜の時間帯。

夏祭りが開催されるのは、俺の家から少し先にある橋の下で行われるらしい。

「ごめんねー遅れちゃって」

そう言いながら小走りで俺の所にやってきた、朝会った時とは雰囲気が大分違う芽衣だった。

「ほんとはもうちょっと早く出るつもりだったんだけど、服装とかにこだわり過ぎちゃった」

ちょっと照れながらもそう言う芽衣。

「なんかいつもよりかわいい気がするんだけど......」

「ほんとっ?あははっ、ありがとー」

「ほんとなら紬を連れてきたかったんだけど......訳あってこれないんだ」

「ああ、うん大丈夫だよ。それよりぃ、はやくいこっ?」

芽衣はそう言いながら俺の手を引っ張る。

「お、おう......!」

なんか初めて女の子と一緒に夏祭りとかに来た気がする。

なんか、いいなこういうの。

「あ、チョコバナナあるよ!」

芽衣はそう言いながらはしゃいでいる。

「あはっおいしいー」

顔をほころばせながらチョコバナナを食べている。

俺はその様子を少しの間じっと見ていた。

「ん......?あれ、陽翔は食べないの?」

「あっ、ごめん。ちょっと見とれてたかな」

「なにそれー、ほら、陽翔も食べたらいいじゃんっ」

そして俺にチョコバナナを向けてくる。

「ちょ、ちょっと待てよ......」

「だめー待てないっ」

「おい――むぐっ!?」

俺の言葉を聞かずに、チョコバナナを俺の口に押し込んでくる。

「どう?美味しい?」

「むぐ......お、美味しいけどさぁ......」

「美味しいけどなに?」

「......いや、なんでもない」

その後は、リンゴ飴やらくじ引きやら射的やらと、色々と楽しんでいる最中に、綺麗な花火が打ちあがり、それを見ながら芽衣とこの夏祭りを存分に楽しんでいた。











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